インバウンドの勢いが止まりません。今年 3月から 7 月まで 5 ヶ月連続で訪日外国人観光客数が 300 万人を超えました。このまま年間最多となる勢いで、年間 5000 万人を超えるスペイン、フランスなど世界の観光大国の仲間入りも近いです。人数の増加以上に注目すべきは、日本の何を求めてきたのかという質の変化です。京都・奈良の古き伝統ある寺社。ハイテクビル群に囲まれた東京・渋谷のスクランブル交差点。北海道や沖縄などの美しい自然環境。人気漫画・アニメに描かれた鎌倉などの聖地などなど。そうした場所を訪れるのが今までの日本観光の王道でしたが、今は日本の美味しい食べ物が目当てですという動機が急増中です。そう、おいしいニッポンの魅力がグンと増しているのです。
昔から“寿司・天ぷら・すき焼き” が日本食の代表格でしたが、訪日外国人の多様化が進み、今やラーメン、カレーライス、焼き肉、うどん・そば、おにぎり、ぎょうざ、お好み焼き、もんじゃ焼き、といった日本人が日常的に食べている B 級グルメの人気が盛り上がっています。コンビニで売っているスイーツ類やアイスクリームが爆買いの対象になっているのも、日本人には意外な現象でした。うまさと安さで外国人観光客の満足度が一番高いのは、やはり寿司でした。富裕層らしき外国人女性がテレビで嬉しそうに話していたのは、寿司店でのおまかせ値段。ニューヨークやロンドンなど欧米の都会では「おまかせは 1 人 5 ~10 万円、それが江戸前寿司の本場の東京・銀座では 2 万円か 3 万円ですむのよ」と弾む声で語っていました。高級店の10席のカウンターが外国人で埋まっている光景を目にすると、時代の変化を感じますね。やはり本場で本物の寿司を味わうのが最高という感想は、次に、私の国で食べている寿司は本物じゃないの?という不安と不満につながります。そこで今、日本の寿司職人が海外で引っ張りだこ、という現象が起きています。年収 480 万円だった銀座の寿司店職人がシンガポールで働きだしたら年収は 3 倍を超えた手取り 1500 万円。パリの高級寿司店に飛んだ職人は年収 2 倍。フロリダの店に移った職人は年収 10 万ドル(約1400 万円)が最低保証された。こんなバブリーなケースが珍しくないそうです。
こういう現実を目の当たりにすると、誰も彼もが寿司職人になり海外に渡りたいと願うのは人情でしょう。ところが、一人前の寿司職人になるには飯炊き 3 年握り 8 年という修業期間が必要という職人世界の掟が昔からあり、若者の参入の道を狭くしていました。しかし、世界各地に飛び出ていく職人の数が足りないという時代になり、国内の寿司職人養成学校では最短 2 カ月、多くは 6 カ月から 1 年足らずで寿司職人、店長、マネージャーの実力を付けさせています。銀座から世界へというスローガンのもと、海外就職サポートをする店もあります。以前、世界中の日本大使館に寿司職人を配置すれば日本人気が高まると外務省関係者が発言したときは、突飛な案として実現しませんでしたが、日本で美味しい寿司に出合った外国人がこんなに増えて、自分の国でも本場の寿司が食べたいと思うほど、海外での職人の活躍の場が増えていくでしょう。美味しいものを食べているとき人は幸せと平和を感じます。そう、日本食は地球を救う?
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