日本は経済大国だからということばに、違和感を持つ人が増えています。日本がアメリカに次ぐGDP 世界2 位だった1980 年代のバブル景気を謳歌していた頃は、誰もが誇らしい現実として受け入れていました。それが今、GDP では中国に抜かれ、そろそろドイツに追い越されて世界4 位に転落しそうだし、平均賃金では2020 年に韓国を下回る424 万円に低迷という厳しい現実です。今の10 代から20 代のZ 世代といわれる若者ならば、経済大国ニッポンなんて、いつの時代の話?とキョトンとすることでしょう。地球上の経済力の地殻変動がジワジワと起こっている、その振動に気がつかねばなりません。最大の震源地がグローバルサウスと呼ばれる国々・地域です。
かつては、後進国、低開発国、途上国と呼ばれたアジア、アフリカなどの国々の多くが、今や新興国、中進国と名称を変え、経済成長のカーブも右肩上がりです。先進国と途上国の格差を南北問題としてきた歴史から貧しい南の国々、それに地理的にアフリカや南米など南半球の地域が多いことから、グローバルサウスと総称されるようになりました。今年1 月にインドが呼びかけたオンライン会議グローバルサウスの声サミットには、125 カ国の首脳や閣僚が参加しました。国連加盟195カ国・地域の6 割を超える大勢力です。ロシアのウクライナ侵略によって、エネルギー・食料の世界的危機が深刻化したとき、こうした国々は先進国以上の影響を受け、アメリカ・EU・日本といった西側先進国とロシア・中国などとの対立にも、一歩離れた対応をして、かつての東西冷戦に巻き込まれない政治スタンスを取り始めています。この大きな勢力を、欧米も中露も無視できず、今後の付き合い方が外交上の大きな課題になっています。5 月に主要先進国7 カ国首脳会議(G7 サミット)を広島で開く日本。その直前に岸田首相がエジプト、ケニアなどアフリカ4 カ国を歴訪、日本もグローバルサウスとの関係強化が重要だと印象づけました。
今まで格下に見ていた国々が追いつき追い越していく姿を目の当たりにしてきたここ30年の日本で何が起きたか。日本を飛び出す若者が増えたのです。2022 年10 月時点で、海外で暮らす日本人は約130 万人。コロナ禍で駐在員や留学生は75 万人と微減ですが、永住権を持つ日本人は逆に3.6%増えて55 万7000 人と過去最高を記録、ここ20 年連続増加中とか。若者の海外行きの流れは、1990 年代後半からは留学やワーキングホリデー制度の活用が主でしたが、2005 年あたりから様変わりしてきました。就職難の深刻化、非正規従業員の激増、低賃金、過酷な残業、いじめの常習化―――の日本社会を捨てて、息苦しい日本から脱出したい、同じ仕事なら高収入の外国の方がいいと、動機や目的が変化し専門職や技術者などの高度人材が多く、うち6割は女性が占めています。世界経済の比重がグローバルサウスに傾斜していく21 世紀。経済的な日本沈没を避けるために、明治開国以来の欧米重視の国のあり方を、見直すときが来ているのかも知れません。
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