サムライ・ブルー

年を越した今でも興奮と感動がよみがえる。そう、サッカーワールドカップ・カタール大会での日本代表チーム「SAMURAIBLUE サムライ・ブルー」の活躍です。ドイツ、スペインという強豪に逆転勝ちした実力に加えて、礼節、勇気、尚武、結束、忠義、名誉といった「サムライ魂」を感じさせる選手と監督の姿。多くの国々から称賛され、勝ち負け以上に貴重な財産を得ました。その侍のシンボルといえば、常に身につけている日本刀。日本人だけでなく、近年は多くの外国人からも素晴らしい芸術品として高く評価されています。常に死を念頭に生きた武士の精神性の象徴という意味も理解され、単なる武器を超える価値が伝わっています。古代の刀が反りの入った今の日本刀になったのが平安時代中頃といわれ、1000 年以上の変遷を経て21世紀の今も、その魅力にとりつかれた人が絶えません。

高度経済成長期の1970 ~ 80 年代に続く第2次刀剣ブームは2015 年、意外なところから火がつきました。刀剣趣味とは無縁と思われていた若い女性たちが飛びついたのです。オンラインゲーム「刀剣乱舞」にハマった女性たちが、刀剣に宿った付喪神(つくもがみ)である美男の刀剣男士に入れ込み、それぞれのお気に入りの実物の名刀を各地の博物館や美術館に見に行き、刀剣女子という流行語が生まれました。螢丸、石切丸、山鳥毛といった名刀の復刻・レプリカ制作のクラウドファンディングに1 億円を超える寄付金が集まるほどの熱気です。背景には、主人公たちが日本刀をかっこよく使う漫画、アニメ、映画(るろうに剣心、ONE PIECE、鬼滅の刃など)があったことは間違いありません。一昨年末まで東京国立博物館で展示された17 振りの国宝の刀を一目見ようと、老若男女の長い列ができていました。

明治9年( 1876 年) に廃刀令が出され、帯刀は禁じられましたが、作ることは認められました。それ以降に鍛造された日本刀は現代刀と分類され、今も173 人の刀匠が作刀に汗を流しています。ただ、若者が私もマイ日本刀を作りたいといっても、簡単にはいきません。刀匠資格を文化庁から認可された者しか製作を許されず、そのためには刀匠のもとで5年の修業をしてから、文化庁主催の美術刀剣刀匠技術保存研修会を受けて、試験に受かることが条件という狭くて厳しい門があります。全日本刀匠会のホームページでも、原則無給、近くのアパートからの通いなど生活費は自己負担といった修業の厳しさを率直に記しています。でも、現実にはいない女性の刀工が、最近出版された青春小説「青の刀匠」(天沢夏月著)では、全国ただ一人の女性刀鍛冶として登場、男子高校生に夢を与える姿がすがすがしく描かれています。歴史は変わるか。食べていくのは大変な職人の世界ですが、歴史に残る一品を作り出す芸術家「SAMURAI BLUE」として生きていく道を選ぶ若者、キラリと出てきて欲しいですね。

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