巨大なごみの山から強烈な悪臭が漂う。虫や鳥やさまざまな動物が群がっている。その中には売れそうなごみを拾う人間の姿もある。アジア、アフリカ、中南米などの発展途上国の都市部には、こんな光景が珍しくありません。ごみ処理問題は今や世界的な緊急課題となっています。なぜなら、ごみの山から出るメタンガスが強力な温室効果ガスだからです。先月エジプトで開かれたCOP27(国連気候変動枠組み条約第27 回締結国会議)では、ごみ処理問題は大きな話題でした。ごみは埋めれば問題ないんじゃないのと日本を含めた先進国の人たちは思うかもしれません。でも思い出してください。日本でも40 ~ 50 年前には埋め立てたごみの処理に際し、悪臭、汚水、粉塵、毒ガス発生などの問題が全国各地で起こり、公害として政治問題になっていたことを。ところが、今はどうでしょう。全国およそ200 カ所のごみ処理場で問題は解決されています。
1979 年に日本のごみ処理場の標準構造とされたのが、準好気性埋立て構造です。福岡市と福岡大学が共同開発したので福岡方式と呼ばれています。これが今、アジア、アフリカ、中南米の途上国21 カ国のごみ処理問題の救世主として普及し、COP27 でも大きな関心を呼び、今後さらに世界各地に拡大する勢いです。原理は簡単です。生ごみなどを野積みにしておくと酸素が不足しメタンが発生する。そこで処理場の底に集排水のパイプを通して外気を取り込み、土壌の微生物を活性化させ、廃棄物の分解を促進させ、汚水浄化とメタン抑制を実現するという仕組みです。この技術開発をリードした松藤康司福岡大学名誉教授(廃棄物工学)によると、材料は途上国でも手に入る竹や廃タイヤを利用して、維持管理も現地の人が使いこなせるローテクで低コスト、という地球にやさしい方式だとか。88 年のマレーシアを皮切りに、イラン、中国、ドミニカ、ベトナム、南太平洋の島国で現地指導するとともに、120 カ国超からごみ処理担当者を福岡に招き、研修会も行っているそうです。地域住民の生活環境が確実によくなるごみ処理技術です。その分野で、日本が広く国際貢献しているという事実は、もっと多くの人に知られていい誇らしい話題です。
国際貢献といえば、まだ収拾のつかないロシアによるウクライナ侵攻でも、日本の力が及んでいます。武力や軍事面ではありません。領土の半分に当たる30 万平方キロにロシアが地雷や爆発物が埋められた可能性があるとか。その地雷撤去に世界トップレベルの実力を投入して支援しようという動きです。70 年代から90 年代にかけ、内戦で国土に多くの地雷が敷設されたカンボジア。戦後も地雷による死傷者が数万人と後を絶たず、カンボジアは日本をはじめとする各国から撤去技術を学び、今や世界有数の地雷撤去専門家を有する国となっています。負の経験を世界平和のために生かすという姿勢で、今回日本と組んでウクライナのために貢献する決意です。国家や団体の国際貢献という大規模な事業がある一方、個人で困難な地域の人々に支援している日本人も少なくありません。国境を越えて困っている人の役に立ちたい。その発想が源流です。自分さえよければという〇〇ファーストより、ひとの喜びを我が喜びとする人が増えたほうが、地球にはやさしい未来になりそうですが。
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