わーい、きょうは焼き肉だ!と子どもたちは歓声を上げ、若者たちも焼き肉パーティーで盛り上がります。日本人は牛肉が大好き。幕末から明治維新にかけて西洋人の影響で日本人の多くが牛肉を食べ始めるようになってから150 年ほどになります。牛肉は高嶺の花であり、ステーキはご馳走でした。今ではハンバーグなど手頃な価格の牛肉料理が多種多様に食べられる時代ですが、それでも牛肉はご馳走のDNA が21 世紀世代にも受け継がれているようです。そんな牛肉好きに、食欲の秋を前にして朗報です。美味しいステーキ肉の代表として世界的にも評価の高い黒毛和牛ブランドに、この夏、新たに京大紅牛(くれなゐビーフ)が市場デビューしたのです。え、京大?あの大学の?そうなんです。京都大学大学院農業研究科附属牧場(京都府京丹波町)で60 年間研究、微量元素のコバルトを配合したサプリを与えるなどして肉質を向上させ、牧場内で一貫肥育した黒毛和種がしっかりした霜降り、あっさりした味わい、ほのかに漂う脂の香りのA5 級として、レストランや家庭で食べられるようになりました。
大学の名前がついた食品といえば、20 年前に完全養殖に世界で初めて成功した近大マグロが有名です。ハマチなどと異なり人工飼育が極めて難しいマグロの王様クロマグロは、海のダイヤとも呼ばれる高級魚。牛肉に劣らず日本人の大好物です。近畿大学では研究開発を一段と進化させ、海洋養殖から陸上での水槽に切り替え、海水ではなく人工飼育水を使っての養殖へと切り替えつつあります。海で獲るサカナを陸で生産する?陸地に施設を造って真水に塩分を加えた人工海水のプールの中に独自の餌を与えて育てる陸上養殖が今、ビジネスとして注目されています。JR 西日本が鳥取県に整備した陸上施設ではサバの養殖がさかんです。海水養殖では寄生虫のアニサキスが混じって食中毒を起こす怖れがありますが、脱海水なら安全とPR。虫がつかないように大切に育てた箱入り娘のシャレから名付けた商品名はお嬢サバ。広島県のカキ養殖も地下水のくみ上げを利用しており、海を一度も知らずに大切に育てられた世間知らずのお坊ちゃんで、その名もオイスターぼんぼん。どれも上げ潮に乗っているようですね。
さて、話題をビーフに戻すと、世界的には牛肉礼賛どころか、牛肉消費を減らそうという声が高まっています。そもそも肉と魚を食べないというベジタリアンは欧米を中心に19 世紀から存在しており、さらに卵や乳製品など一切の動物性食品を口にしないヴィーガンという完全菜食主義者が近年増えてきており、意識的に動物性食品を減らすフレキシアンも徐々に若い世代に浸透しているようです。それに加えて最近、地球環境に負荷が小さい食べ物を選んで食べよう!とくに気候変動に悪影響のある牛肉消費を極力減らそうという主張が世界中に響き渡っています。クライマタリアンという人たちです。元ビートルズのポール・マッカートニーさんが提唱するミート・フリー・マンデーは、毎週月曜日は肉を食べないようにというキャンペーンです。肉食はもうイエスタデイ(過去)の食習慣、というのでしょうか。食卓の一皿から、さて、地球の環境問題が見えてきますか。
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