毎日のように新聞やテレビやネットで見たり聞いたりする言葉、SDGs(エスディージーズ)。国連総会で2015 年に採択された「持続可能な開発目標」のことで、具体的には30 年までに達成すべき17 の世界的目標が示されています。その2 番目にあるのが「飢餓ゼロ」です。え、現代でも飢餓なんてあるの?といぶかる若者がいるかもしれませんが、地球上には今も戦争、紛争、異常気象が絶えず、食糧不足で飢えに苦しむ人々が存在するのが現実です。近年は新型コロナウイルスの世界的な蔓延で食料の輸出入が混乱し、今年に入ってロシアによるウクライナ侵攻が加わり、世界のパンかごと呼ばれるウクライナからの小麦の輸出が激減してしまい、世界各国の食糧事情が厳しくなっています。食料安全保障という言葉がにわかに現実味を帯びてきました。
飢餓は昔から発生していましたが、それは一つの国や地域内での食料の供給不足や偏りによるものでした。ところが20 世紀以降の民族国家群の誕生、爆発的な人口増加、食料貿易量の飛躍的増大が相まって、自国にない食べ物は他国から買えばいいというシステムができて、飢餓の心配はなくなるはずでした。そこで各国政府の重大な役割となったのが、すべての国民が今も将来も良質な食料を合理的な値段で安定的に手に入れることができることを保障する、つまり食料安全保障政策です。世界平和が続き貿易体制が維持されていれば食料は地球を回るのですが、今回のような戦争、異常気象、流通混乱、供給不足といった事態が重なると、まず自国民の食料が優先と20 カ国以上で今春から自国生産食料の輸出制限をする食料保護主義が台頭し、小麦や砂糖(インド)、鶏肉(マレーシア)、牛肉(アルゼンチン)、パーム油(インドネシア)など影響は広がっています。
でも日本は米も自給できているし心配ないだろうという人はあまりに楽観的か世間知らずです。20 年度の食糧自給率は食料カロリーベースでわずか37%と過去最低。つまり日本人の食卓の6割以上が外国からの輸入食料に依存している現実を直視すべきときです。流通コストの上昇、小麦価格の暴騰、熱波などによる生産量減少が重なり、日本でもすでに基礎的な食料品の値段が10 ~ 30%値上がりしており、あんパン250 円、カップ麵300 円、ラーメン1000 円となる日も近いのでは、という不安が募ります。敗戦後の食糧危機の折に、「貧乏人は麦を食え」と国民に辛抱を説いた大臣がいましたが、戦後の食生活の西洋化で、今や米よりパン食のほうが多数派になった時代。もし全面輸入ストップになり、国内産の食料だけで調理するとすれば、晩ご飯は白米茶碗1 杯、野菜炒め2 皿、焼き魚1 切れで、焼き肉は14 日間で1 皿、卵は13 日間で1 個、牛乳は4 日間でコップ1 杯(農林水産省の試算)。街角でハンバーガーやピザを注文するなど、まず無理でしょう。そういう日が来ないように日本政府は食料輸入先の多様化を図りつつあり、カロリーベースの自給率を30 年までに45%に引き上げる目標を掲げています。民間でも、大豆で作った肉、野菜ベースの卵など植物由来の食品開発が急速に進んでおり、食料確保のあの手この手が進行中です。私たち一人ひとりができることがあります。食べ残しをなくし、食品ロスを限りなくゼロに近づける努力です。
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