初夏の風が野山を吹き抜ける季節になると、子どもの頃に歌った「草競馬」の軽快なメロディーが風と共に流れてきて、草原を奔放に駆ける馬の群れの光景が目に浮かびます。アメリカの作曲家、フォスターの歌曲は文部省唱歌にもなっており、♪デュダーデュダーのリフレインを口ずさむと、思わず体が動き出してステップを踏みたくなります。競馬も本格的なシーズンに入り、先月下旬の日本ダービーには久しぶりに競馬場に数万人の観衆が詰めかけて、歓声と嘆声が巨大な渦となって初夏の空に舞い上がりました。
その日本の競馬界に今、異変が起きています。いや、異変というより躍進というべきでしょう。日本産の競走馬が競馬先進国のヨーロッパ、アメリカでのGⅠレースに次々挑戦して、ここ数年、次第に勝利数を増やしてきているのです。今年3 月には高額賞金で有名なUAE(アラブ首長国連邦)のドバイ国際競走GⅠレースで、昨年の日本ダービー馬シャフリヤールとパンサラッサの2 頭が2 勝して、GⅡを含めて5 勝を飾る健闘を見せました。日本馬の海外挑戦は1958年に米国遠征したハクチカラが第1 号でしたが、世界の壁は高く、その後も長い間トップクラスに食い込めず、実力の差は歴然でした。そこで競馬界全体が世界に通用する馬づくりを!と強化策を模索しました。1981 年に数億円の賞金を掲げたジャパンカップを創設し、海外の強豪を集めることによって日本の騎手や調教師や馬主たちに刺激を与えました。1990 年代初めには米国GⅠレースの強豪馬だったサンデーサイレンスを種牡馬として輸入、スピードとスタミナに優れた血統を受け継いだディープインパクトなどの子孫が日本各地の牧場で生まれ、次々と実績を残して、現在に至っています。
ただ、世界最高峰のレースといわれる英国ダービー、アメリカ・ケンタッキーダービー、フランス凱旋門賞には、いまだ日本産馬は1頭も勝利していないのが現実です。とくに世界最高峰レースと評価の高い凱旋門賞には、これまでに日本馬3頭が2位4回と善戦しており、あと一歩のところまで来ています。今年10月の凱旋門賞には今春の天皇賞馬タイトルホルダーやシャフリヤールなど7頭がすでに登録しており、日本初の快挙の期待が高まっています。スポーツ界では世界クラスでの日本人選手の活躍の領域が次第に拡大しています。野球では米メジャーに野茂、イチロー、松井、大谷、欧州サッカーでは中田、香川、岡崎、長谷部、長友らが確かな足跡を刻み、バスケットボールでは八村、渡邉、テニスの錦織、大坂らが、世界トップクラスの存在感を広げています。近い将来、競馬界から世界最高峰にたどり着く優駿が出現する、その日が今年中に来るかどうか。さて、あなたはどちらに賭けますか。
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