4月の春の訪れから日ごとに山や里の緑が濃くなり、5月の声を聞くと気温が上昇して生き物の成長が実感できる季節となります。そんな思いを共有する人が多かったからでしょうか、戦後の昭和24年(1949年)5月5日が国民の祝日こどもの日としてスタートしました。生命力にあふれた子どもたちの躍動する姿は、この五月晴れの下にふさわしく、歓声を上げて遊び回る光景は見るものにも元気とやすらぎを与えてくれます。
そんな子どもたちの中でも最も輝いて見えるのは、ピッカピカの小学一年生でしょう。陽光の下、人生の新たな一歩を踏み出した小さな胸の中には、大人になったら何をしたいか、さまざまな夢と希望が大きな風船のようにふくらんでいます。ランドセルの材料となる人工皮革「クラリーノ」の製造・販売をしている化学メーカークラレが1999年から毎年実施しているアンケート調査将来就きたい職業が参考になります。クラリーノ製ランドセルを購入した男女各2000人に聞いた2022年の結果は、男の子のトップ10は①警察官②スポーツ選手③消防士・レスキュー隊④運転士・運転手⑤研究者⑥ユーチューバー⑦テレビ・アニメキャラクター⑧医師⑨ケーキ屋・パン屋⑩大工・職人—--で、女の子は①ケーキ屋・パン屋②芸能人・歌手・モデル③花屋④医師⑤警察官⑥保育士⑦看護師と⑦教師⑨アイスクリーム屋⑩美容師---でした。男子の1位警察官は昨年に続いて連続トップ、3位の消防士と5位の研究者は共に過去最高比率を記録。女子の4位医師と5位警察官も過去最高比率で、6位保育士と7位教師も前年より上昇しています。専門性が生かせて、資格を持つ仕事に人気が高まっています。さらにコロナ禍の日常が続いたこの2年間の生活が子どもたちの目にどう映っていたのか。困っている人の役に立ちたい、世の中を少しでもよくしたいという志を持ってコロナと戦う職業人、エッセンシャルワーカーへの敬愛と憧れが見て取れそうです。今の若者らはというなかれ、子どもたちはテレビドラマやニュースを通して、案外しっかりと歴史の流れを感じているようで少し安心できませんか。
とはいえ、同時に子どもの親たち4000人に聞いた将来わが子に就かせたい職業を見ると、親心というか、これも時代の空気の反映かなと思わせる結果でした。トップ3をみると、男の子には①公務員②会社員③医師、女の子には①看護師②公務員③医師の順でした。揺れ動く時代が続く現代、さらに不確実性が増しそうな将来を見据えると、安定性と堅実性を求める大人の価値観がもろに出ています。公務員も会社員も3年たったら3割は辞めている現実と、お金より好きな仕事で起業したいという若者の思いが、さてこれからどう交差していくのでしょうか。とはいえ、夢を語れる日本の子どもたちはまだ幸せというべきか。ロシア軍の侵攻をうけているウクライナでは、爆撃で死傷する子どもや国境を越えて母親と他国に避難する子どものニュース映像が毎日のように伝えられています。日本のこどもの日は5月5日ですが、世界子どもの日は11月20日。世界中の子どもたちの生まれながらに持つ権利を再認識しようと1954年に国連が制定した日で、1989年には国連総会で子どもの権利条約が採択された日でもあります。今年のこの日までには、ウクライナの子どもたちに笑顔が戻ることを祈ってやみません。
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