9月末からほぼ連日、新聞やテレビで報道されているのが、民主的選挙を求めての香港での抗議行動。東京でいえば銀座や新宿にあたる香港の都市中枢の道路を占拠して、座り込みが1月以上も続いている。その主役は大学生を中心とした若者たちです。香港当局が排除のために発射した催涙ガスを防ぐために、若者たちが色とりどりの雨傘を差したことから、「雨傘革命」と命名されもしました。香港は1997年にイギリスから中国に返還されたあと、50年間は「1国2制度」が保障されました。しかし、2017年からは香港のトップである行政長官を選ぶ選挙に立候補できるのは、事実上中国共産党の推薦者だけという方針が出されて、今まで認められていた香港の自由と民主主義が失われてしまうと若い世代が「NO!」を叫んだというのが大体のいきさつです。中国政府も、もし強行措置に出ると、天安門事件の二の舞いになり、国際社会から非難を浴びると手をこまねいていて、流血騒ぎにならずに済んでいます。11月中旬にAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議が北京で開催予定という事情もあって、中国政府も荒っぽい解決手段が取りにくいのでしょう。
大学生の抗議運動といえば、台湾で今春、立法院(国会)を3週間占拠するという「ひまわり学生運動」がありました。中国との貿易を急速に拡大すると、台湾が大陸・中国にのみ込まれるという心配が原動力でした。アジアの学生は熱いのです。というと、いやいや、権力にNO!を突きつけたのはおれたちの方が早いと自慢げに語り出しそうなのが、団塊の世代を軸にした今の60歳代後半の日本人男性たちです。1960年代後半から70年にかけての大学紛争、日米安保反対運動では、ほぼ全国の大学を拠点に、政府、大学当局に異議申し立てを突き付け、機動隊と激しく衝突する光景があちこちで見られました。そんな全共闘世代からすると、おいおい、今の日本の大学生は何をしているんだという声が上がってきます。おとなしくて礼儀正しいといわれる現代青年たち。サッカーの試合や音楽のライブでは熱狂ぶりを見せるものの、こと政治・経済に関しては、あまり自分の意見を言わない。抗議活動も目立たない。いや、原発や特定秘密保護法に反対してデモや集会に出ている若者は結構いるという現実はある。でも、大学生が主体となって異議申し立てをしている運動は極めて少ない。身近な大学生に聞いてみても、決まってしまったものは変えようがない、反対活動をすると、就職に不利になる、自分には関係ないと、権力・権威への批判は影をひそめている。社会を変えるという視点と熱意があまり感じられません。
それを裏書きするように、内閣府の「子ども・若者白書」2014年版をみると、確かに社会変革のエネルギーは弱々しく感じます。日本・韓国・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンの7カ国を比較する今を生きる若者の意識によると、社会現象が変えられるかもしれないとの思いは、30・2%の日本が最下位で、他6カ国は52~39%もある。実現不確かなことへのチャレンジ精神も最下位。将来への明るい希望もドンジリ。日本を洗濯する!と立ち上がった坂本龍馬たち幕末の若者たちを生みだした日本はどこへ行ったのか、女子や子どもたちに教育の機会を!と命を張った活動で、今年のノーベル平和賞を受賞した17歳のパキスタン人少女、マララさんのつめのあかでも煎じて飲ませたいと怒り、ため息をつく旧世代、高齢の方々もいることでしょう。いやいや、今の日本は、貧しい社会を脱して成長社会を経験した後の成熟社会。改革は必要でも、根底から社会を覆す革命には拒否感がある。若者でも失うものをたくさん持っているからねと訳知り顔で説く中年世代もいます。一方的にダメ宣言をする前に、東日本大震災など自然災害発生と同時にサッと駆けつけるボランティアの若者たちの行動力を思い浮かべてください。先ほどの「白書」の中の自国のために役立つと思うようなことをしたいという項目に対して、54・5%もの日本人青年が「はい」と答え、堂々の1位です!社会貢献への意思は強くあるが、それをどう表すか、表現方法がこれまでの世代と異なるだけかもしれません。まだまだ見捨てたものではありませんよ、日本の若者たち!
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