抜けるような秋空の下、希望に輝く若者の顔、顔、顔。入学式といえば、私たちの頭の中では、桜咲く春の季節と密接に結びついていますね。でも今年9月には、日本のあちこちの大学で入学式が行われました。欧米などの大学の学期に合わせて、外国からの留学生や外国留学から帰国した日本人学生を受け入れているのです。世界の中では日本は少数派の4月入学。グローバル時代に対応した秋入学制度が日本で徐々に広がっています。そのように世界中で若者たちが他国で勉強する機会がどんどん増えているのに、なぜか我が日本の学生の留学は減る一方なのです。とくに戦後、留学生を最も多く受け入れてきたアメリカに留学する日本人は1990年代以降減少続きで、急増する中国や韓国の数分の一にまで落ち込んでいます。アメリカ政府や民間教育機関から「お~い、日本の若者たちよ、もっと留学しましょう」と呼び掛けられているんですけどねえ。
減っているのは留学生の数だけではありません。大学に進学する年齢にあたる18歳人口そのものが減っているのです。今夏、予備校の御三家の一つ、代々木ゼミナールが来年度、全国27校中20校を閉鎖すると発表して、受験生減少の現実を強く世間に印象付けました。統計を見ると、団塊ジュニア世代が通過した92年の205万人をピークに、2014年度は118万人にまで下降しています。その間に大学進学率は上昇を続けて50%を超える一方、浪人生を出さないようという政府の指導から、4年制大学の数が1992年の384校から2014年の603校にまで急拡大、総定員も膨張して、今や大学全入時代を迎えています。そのひずみというべきか、定員割れしている私立大が全体の4割にまで広がり、経営赤字の大学も3校に1校の割合に及んでいます。大学淘汰の時代を決定づけるといわれる2018年問題も間近です。その年の18歳人口は65万人。そこから確実に減少に向かい、2031年には48万人とガクンと落ち込む。1000人規模の大学が170校もつぶれるといった最悪のシナリオまで出ているほどです。
すでに志願者獲得大競争時代が始まっています。推薦入学やAO入試を増やし、一般入試枠を減らして安定的に学生を確保する“囲い込み”を、多くの大学が実施中です。さらに授業カリキュラムも就職に実践的で有利がトレンドです。そのあおりを受けて、日本の近代文化をリードしてきた文学部が、就職に役立たないと、かつての人気を失いました。青森県・弘前大学が文系の定員を150人減らして理系を90人増やす改革案を9月に発表するなど、どの大学も生き残り策を懸命に模索中です。多くの大学で学科名に国際とか文化交流が付けられるようになったのも、その一環でしょう。文学、哲学をじっくり学んで、人生の意味を深く考えるという教養重視のカリキュラムは時代遅れとされているようです。ここ十数年の就職氷河期を乗り切るための苦肉の策だったかもしれませんが、あまりに安易な実践教科ばかりでは学力不足、常識欠如、コミュニケーション力低下の三重苦から脱出できないのではないか。そんな不安が頭をもたげてきます。幸い、氷河は解けてきて求人状況は大幅に改善しつつある今、就職するための方便としての大学から、自分の一生をかけて進む道を考えさせる大学へと大いなる変革を期待する声も出ています。成長から成熟の時代を迎えた日本にふさわしい大学教育が、少子・高齢社会真っ只中の今こそ求められている。人類未踏の超高齢社会の先頭を走る日本が、世界の見本、模範となる高等教育のあり方を開発、創造する。それも大いなる人類への貢献となることは間違いありません。
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