8月は夏祭り真っ盛り。北から南まで日本列島は、かねや太鼓、おはやしの響きに包まれます。♪らっせらーらっせらーとはねとが地をける青森・ねぶた祭り。♪踊る阿呆に見る阿呆~で有名な徳島・阿波踊り。♪土佐の高知のはりまや橋の~と色香漂う高知・よさこい祭り。観光客が全国から集まるこうした大型の祭りだけでなく、各地でも中小の祭りが繰り広げられています。神社の境内や都会の広場やマンションの屋上でも盆踊りの光景が見られるのが、21世紀の日本です。
夏祭りの多くで見られるのが、市内の目抜き通りを練り歩く踊りの列です。陽気に元気に、ときにユーモラスに。会場に外国人観光客がたくさん来る阿波踊りは、すでに国際的な広がりを得て、日本を代表する踊りとして海外にも派遣されるほど。日ごろ国際舞台では日本人はシャイで喜怒哀楽の感情を表に出さない民族と思われていますが、楽しく踊る姿を間近に見た外国人たちは、人生を謳歌し祖先・神仏・大自然に感謝する日本人のハートの一端を知り、ぐっと親しみを増したといいます。そこに民衆の生きるエネルギー、大衆のたぎるパワーを感じるからでしょう。国内でも阿波踊りは東京の神楽坂や高円寺といった人気の街で毎年踊られており、よさこい踊りは札幌のよさこいソーラン踊りへと発展して、そのキレのいい踊りは全国の若者たちに広まっています。そう、日本は「ストリートダンス大国」なのです。
ストリートダンスというと、アメリカ発祥の踊りで、ヒップポップ、ジャズダンスなどが目に浮かびます。大ヒット曲「スリラー」で見せたマイケル・ジャクソンのムーンウオークを世界中の若者がまねしたのを思い出します。ところが作り込みの緻密さなど、ストリートダンス作品は今や日本が世界一だという人がいます。ミュージカル演出をニューヨークで学んだ工藤光昭さん(40)が帰国後、日本の各地で個性的な踊りを創作している振付師や巧みな技を身につけたダンサーがいることを知り、「ストリートダンスマガジン」を創刊、自ら編集長になりました。そんな才能を一堂に集めてみたいと、2011年から全国コンクール大会「LEGEND TOKYO(レジェンド・トーキョー)」を開催しました。振付師の創作した5分以内の作品に10人以上のダンサーがオーディションで集まって繰り広げる群舞が審査対象。7月末に千葉県・舞浜で開かれた第4回大会では、英国からの参加を含め22グループが独自の作品で舞台狭しと華麗な創作ダンスを繰り広げました。その中で第4代レジェンド(1位)を獲得したのは、振付集団「Memorable Moment」の作品「No War」でした。軍隊が舞台を行進した後、戦禍が子供たちをも巻き込む様を66人のダンサーが表現して、身近な隣の人を大切にするには戦いはいらないというメッセージがじんわりと伝わる作品でした。すでにアメリカの大会でも入賞した今日性のある踊りです。ストリートダンスのもつ大衆による、大衆を楽しませ、大衆に受け入れられる作品こそ、夏祭りのエネルギーと繋がる魂なのでしょう。この夏、どこかの祭りであなたも踊ってみませんか。大地からパワーと魂が伝わってくるかもしれませんよ。
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