サムライブルー・サプライズ

「4年に1度の大会」というと、日本人の多くはオリンピックを思い起こすでしょうが、欧米では、サッカーのワールドカップを思い浮かべる熱狂的な人たちであふれています。6月12日から7月13日まで、第20回となるブラジル大会が開催されます。32チームが出場しますが、我らが日本チームも5大会連続5回目の出場を果たしています。しかも、今大会の「サムライブルー」は史上最強チームとの評価と期待を浴びています。海外クラブ所属の選手が過去最多の8人も代表に選ばれているからです。それにこの4年間、日本代表チームを率いてきたザッケローニ監督が選出した23人の代表メンバーの顔触れを見ると、従来の守り重視から攻め重視戦略への切り替えが鮮明です。負けない試合ではなく勝ちに行く試合を目指した布陣、と言っていいでしょう。今まで最高だったベスト16の壁を越えて、ベスト8、いやベスト4まで進出してくれるのでは、との熱い期待が噴出してくる理由もわかります。

「いや、目標は優勝です」と大口?をたたくのは、チームの主軸、本田圭佑選手です。前回のW杯南アフリカ大会で見事なフリーキックを決め、海外でもオランダ、ロシアで活躍して今はイタリアの名門チーム、ACミランでプレーするといった“出世魚”です。才能におぼれず地道な努力を積み重ね、あきらめずに前に進む精神力を掛け合わせて、世界レベルへと駆け上ってきたグローバル時代の新日本人と言えるでしょう。「いろんな失敗をしたが、自慢できる失敗ばかり。学んだことを次に生かしたい」という言葉に、今大会でのサプライズを夢みるサポーターも少なくありません。サプライズと言えば、昨年Jリーグ得点王に輝いた大久保嘉人選手の選出の瞬間も大きな歓声に包まれました。2大会連続出場の大久保選手も「出る以上は優勝を目指す」と力強いコメントをしています。ただ、優勝チームを占う各ブックメーカーの賭け率を見ると、日本は32チーム中15~24位で倍率も80~125倍とか。確かに1次予選グループCは世界ランキング8位のコロンビア、12位のギリシャ、23位のコートジボアールと46位の日本より格上のチームばかり。一次予選突破は楽ではないし、ましてや「日本優勝」など数字の上ではまさに「大穴」。それこそ、サプライズです。でもそんなサプライズなら、一度くらい経験したいものですね。

さて、多くのスポーツの中でも、サッカーほどスタンドの観衆、テレビの前のサポーターが熱狂的興奮に包まれるものはないでしょう。スタンドで発煙筒がたかれ、ピッチにコインや瓶が投げ込まれる危険行為や、酒に酔ったフーリガンの乱暴行為など珍しくありません。とくにナショナルチーム同士の国際マッチは、その興奮度のヒートぶりから「サッカーは武器を持たないピッチ上での戦争」とも言われてきました。選手やサポーターによる人種・民族差別の言動も後を絶ちません。世界のいくつかの国で、排外的な愛国主義が若い世代に広がっているのも心配です。さらに今回、サッカー王国といわれ優勝候補の筆頭に挙げられている開催国、ブラジル国内で、「ワールドカップ開催、反対!」のストライキやデモ行進が続いています。「学校も病院も満足できる状態ではないのに、巨額の資金をW杯に使うべきではない」という理由からです。経済状況が思わしくないと、国威発揚の場よりも日常生活の向上を願う人々が増えるのかもしれません。たかがサッカー、されどサッカー。なかなか悩ましい問題です。ただ、ブラジルは日系移民が多くおり、親日的な風土があります。現地では、日の丸の鉢巻きや手袋を何万枚も配って、スタンドの応援席を日本カラ―に染めると張り切っているようです。ジャパンブルーと言われる藍染による青のユニホームに身を包んだ選手たちよ。さあ、サムライブルーによるサプライズを!

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