日本酒

寒い季節は日本酒造りの真っ盛り、全国各地の酒蔵で美酒が醸されています。戦後、ほぼ一貫して消費量が減ってきた日本酒ですが、ここにきて明るい光がさしてきました。すしをはじめとする日本食ブームが世界的に広まり、それを追い風に日本酒への関心が高まっているからです。季節感を大事にして旬の素材を生かした「和食」をユネスコの世界無形遺産に、と政府が申請中ですし、日本酒を「國酒(こくしゅ)」として楽しもうというプロジェクトも、内閣府が進めています。昨年秋のうれしいニュース、山中伸弥京大教授のノーベル賞受賞後の晩さん会に、日本酒「福寿」が供されましたし、今では国際会議のパーティーに日本酒が出される例も増えているようです。1月21日には、外務省が赴任前の新任大使らを集めて「日本酒講座」を開き、「在外公館での会食に日本酒を出して、海外の人々に日本酒の良さをPRして、日本への関心を高めるように」と食文化、酒文化からのアプローチに本腰を入れています。

竹島問題で反日ムードが漂う韓国でも、ここ数年、日本式居酒屋が人気となっており、香りがよくコクのある吟醸酒を求める若者が増えているそうです。中国ではコシヒカリなどの日本産米が高額ながら売れており、刺し身の普及と相まって日本酒の輸出への期待が高まっています。アジアよりヨーロッパの方がすでに、日本酒の味を知る人が多いかもしれません。信州・諏訪の銘酒「真澄」の蔵元、宮坂醸造の酒蔵に3年前の冬、フランスのレストランシェフら20人が訪れ、酒造りの現場を熱心に見学して帰ったそうです。自分のレストランで出す料理と合う日本酒を探しに来たのです。日本食のうまみを取り入れたフランス料理が少なくない現在、ワインだけでなく日本酒とのマリアージュを模索するシェフが増えている証拠です。1990年代終わりに、フランス国内で開催されるワインの国際品評会に宮坂醸造の宮坂直孝社長ら数人の蔵元たちが日本酒のブースを初開設、ワインに負けない香りと味を訴えたその努力が次第に実ってきたのでしょう。フランス人の若者2人が鳥取県の酒蔵で日本酒の仕込みを体験、日本酒をフランスでもっと広めたいと燃えているというニュースもありました。

日本人自身ももっと日本酒を楽しんでと、食・食卓コーディネーターで「彩食絢美」代表、手島麻記子さんが3年前から、イタリア料理を食べながら、それと合う日本酒を飲む会を主催しています。チーズ、生ハム、オリーブオイルなどとマリアージュ(相性)の良い日本酒を探し続けています。今年1月には、なんと日本酒とスイーツとのマリアージュに挑戦。ネットで人気のマダムシンコのバウムクーヘン4種類と、三重県の日本酒「作」「神宮膝元」「黒松翁」との相性を確かめ、日本酒の可能性を広げています。意外とイケるか、いや甘いものは…と敬遠するか。そんな初体験のドキドキ感も楽しんでしまうのが、酒飲みという生き物の特徴かもしれません。それでは、今夜も一杯!

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