世間話の効用

明けましておめでとうございます。

人間の年齢を数え年で数えていた時代には、年が改まると同時に全員が1歳年をとりますから、正月に人生をじっと考えた人が多かったと思います。「門松や冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」という歌が流行ったのも、死に一歩近づいたかという無常観からでしょう。昨年末、日本人の男性が115歳で世界最高齢者となったというニュースが飛び込んできました。さすが長寿大国ニッポン!すでに100歳以上の男女が5万人を超える我が国は、間違いなく人類史上初の超高齢者社会に一番乗りで突入しています。

長生きは喜ぶべきことですが、近年は「健康であれば」という条件が付くようになりました。平均寿命は現在、男80歳、女86歳。しかし、認知症が急速に増加しており、300万人を超え、年々右肩上がりです。各種がん、脳・心臓疾患など病気の不安も高まります。それに加えて、日常生活で誰とも話さずに一日が終わるという寂しい老人たちも、じわじわ増えています。喜怒哀楽のある人間らしい生活をしたい、ボケずに楽しい時間を過ごしたい。こんな心の叫びが日本列島の隅々にまで広がっています。そんな空気が充満する中で、100歳以上元気で生きた「きんさんぎんさん」ブームが22年前に起こり、そして今再び、「ぎんさんの四姉妹」人気が高まっています。

長女98歳、三女93歳、四女91歳、五女89歳の名古屋市内に住む四姉妹がテレビや雑誌で紹介され、その元気でユーモラスな姿が理想の老後の一つとして、うらやましがられています。4人は近所に住み、毎日のように集まっては思い出話に花を咲かせています。いわば井戸端会議のようなもので、屈託のない世間話が延々と続く。このリラックスした会話が、実は脳内の血流を活発にして脳の活性化に効果的、という研究が4人を対象にして進められています。ボケ防止には気の置けない仲間との雑談がいいという処方箋が近く出されることでしょう。でも、高齢者施設などで見受けられるのは、女性はすぐ他人と世間話ができるのに、男性は見知らぬ相手とはなかなか打ち解けず、話も続かないという現実です。年をとってからではなく、やはり若いうちからざっくばらんに話ができる生活を送っていないと、いきなり雑談上手になるのは難しいかもしれません。たかが雑談、されど雑談。

人は皆、一人では生きていけませんものね。

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