しつこい残暑も去り、いよいよ青天から秋の涼風が日本列島に流れ込み、さわやかな日々がやってきました。天高く馬肥ゆる秋の本番。おいしい海の幸山の幸がレストランのテーブルをにぎわせ、食卓には世界のワインが並ぶ季節になりました。ここ数年、日本産ワインも海外で高い評価を得ており、KOSHU(甲州種)の白ワインが人気だとか。ワイン好き人口も増え、日本最大のワイン生産地、山梨県には醸造所まで足を運び、見学・試飲する老若男女が年々右肩上がりだそうです。国産ワインのますますの品質向上に期待いたしましょう。
とはいえ、我が国のワイン消費量の大半は輸入物で、第1位の地位は長らくフランスワインが譲りません。世界に冠たるワイン王国です。その生産地の2大巨頭が、ボルドーとブルゴーニュ。そこで、ここ1,2年、“事件”が起きています。ブドウ畑と醸造所が一体となったシャトーやドメーヌを中国資本が買収する動きが活発になっているのです。世界第2の経済大国になった中国は、ワイン消費量も世界第5位に躍進、富裕層を中心に欧米の高級ワインの大量購入が続いています。さらに生産拠点そのものを購入しようという潮流が起こり、フランスでは20件以上の買収が報道されています。ボルドー地方、赤ワインの名産地、サンテミリオンではブドウ収獲直前の9月にワイン産業、ワイン文化に貢献した人々の表彰式がありましたが、今年は映画「レッドクリフ」に出演、日本の資生堂やカネボウのCMにも出た中国人女優、ヴィッキー・チャオさんが出席、表彰されました。小さなシャトーを購入したからです。地元では中国という大きな市場が開かれるからプラスだという歓迎派と、ワイン作りの歴史と伝統が守られるかどうか不安だという警戒派と半々のようです。
メルローとカベルネフランという2種類のブドウを使い、それを8対2、あるいは7対3の割合でブレンドして口当たりの良い赤ワインを生産するサンテミリオンを中心にした10地区。ブドウ栽培面積が10ヘクタール以下の中小規模が多く、家族数人で経営しているシャトーが多いのが特徴です。中国資本がシャトーを高い金額で買うと、シャトーの評価額が上がって相続税にはねかえり、子どもにシャトーを継がすことが困難になると心配する小規模農家も少なくない。現地ではワインツーリズムを活発化させ、シャトーに宿泊所を作って、世界各地から来る観光客にブドウ畑や醸造所を見てもらい試飲やブレンドを体験させ、トータルにワイン環境を知ってもらいながら、ワイン産業の基盤を強化する戦略に乗り出しています。パリの街だけでなく、南部ボルドーなどワイン産地への旅行が増えているのも、地球環境への関心がグローバルに広がっている証しかもしれません。旅に行けなくても、私たちもワインを飲みながら、その産地への想像を広げてみると、味と香りを一層楽しめるかもしれません。いいワインの定義は何か。ほほ笑みで飲み始め、ほほ笑みで飲み終える、そんなワインだという名言もあります。
食卓によき友、よきパートナーを。では乾杯!
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