レンガ色の壁など瀟洒な建物の大部分が歩行者の目にも見えてきました。10月の完成間近になってきた東京駅丸の内駅舎です。国の重要文化財に指定されている美しい東京の玄関口。1914年(大正3年)に建築家、辰野金吾が設計した3階建ての洋風建築物は、9年後に発生した関東大震災でも崩壊しなかった堅固な構造でしたが、45年の空襲で焼失、終戦2年後に鉄骨レンガ造りの2階構造で再建され、今日に至っています。都内ではここ数年、上野駅、新宿駅、渋谷駅などが大規模な駅舎工事を行い、より美しく、より便利な空間に生まれ変わりつつありますが、満を持して、正面玄関である東京駅が全面改装に入っています。皇居を背に、丸の内駅舎は創建時の3階建てに生まれ変わり、北と南に左右対称に3階建ての美しいドームが復元されるのも、間もなくです。
外観を過去の風格に忠実に戻すのに加えて、未来への備えも万全に、を合言葉にしています。日本最大級の免震工事です。創建時にも約1万本の松のくいが地下20メートルに打ち込まれていましたが、今回さらに新しいくいを450本補強するなどして、近く発生が予測される東京直下地震にも耐えるよう設計されました。いざというときも万が一の事故を防ぐ体制が各所に張り巡らされています。安心安全の砦となることが期待されているからです。
そうしたハード面だけでなく、ソフト面でも東京駅は大きく変わりつつあります。地上だけでなく、地下2階の地下街を含めた「駅ナカ」という巨大な空間が一つの街のようなにぎわいと豊富なコンテンツにあふれているからです。ホテル、ギャラリーとともに数百ある個性的な売り場。行くだけでちょっとワクワクするような通りと施設。そして駅からは絶え間なく電車から乗り降りする人が吐き出されてくる。まるでハリウッド映画「グランドホテル」を見るように、人生の縮図を感じる空間かもしれません。世界的に鉄道の価値が見直されている現代、21世紀の鉄道、駅、新幹線網と近郊線のネットワークなどが巧みに混合された東京圏は、世界一公共交通網が発達している大都市という評価があります。さらに美しく風格ある駅舎が加わると、一日中、駅周辺で遊び回るのも楽しいかもしれません。駅は旅愁を感じさせる場所でもありますから。秋、さあ、東京駅からどこかへ旅に出かけませんか。
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