フェイスブックの光と影

地球上の人口は70億人。そのうち24億人がインターネット利用者という現代。そのうち世界の9億人が登録、利用しているというフェイスブック。創業者で28歳になったばかりのCEO、マーク・ザッカーバーグが先月、アメリカの株式市場ナスダックに新規上場を果たし、時価総額9兆円という米IT企業最高の額を記録したというニュースが世界中を駆け巡りました。しかし、上場後1週間のうちに株価は24%も下げて、企業としての成長性に疑問符が付けられました。金額だけではありません。フェイスブックを筆頭としたソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)そのものについて今、光と影が論じられています。

実名を登録して、自分の職業や会社、出身学校、趣味、友達関係、さらには最近見た映画やテレビの感想などをネットに書き込み、それに引かれた利用者が返信して、ネット上の交流が容易にできるフェイスブック。ゴルフ趣味でつながったり、ジャイアンツファン同士で盛り上がったりと同好の仲間が得られるのに加え、幼なじみや昔の学友からの連絡もあり、タテとヨコの交友関係を楽しんでいる人が結構多いようです。また、職業上のつながりを利用して商談成立というケースもあるようです。ところが、昔なじみとよりを戻す「フェイスブック不倫」現象が英米で報じられています。アメリカでは離婚訴訟の2割がフェイスブック利用が原因、という記事まで出ています。実際の自分よりよく見せようと無理することからストレスがたまるという利用者が多いというデータも出ています。

匿名によるSNSも含めて、ネットでのおしゃべりは日ごろの自分よりも自由にものが言える傾向はあるようですが、相手に対してネガティブな情報や攻撃的な言辞が多いという指摘もなされています。「祭り」「炎上」という言葉があるように、ある人物やテーマに関して、よってたかって非難して汚い言葉を浴びせ続けるというリンチめいた集団攻撃が時々あります。また最近、ネット利用者が日ごろどんな情報をよく見ているか、どんな情報を発信しているか、という行動履歴を集めて人物像を描く「デジタルセルフ」が論議されています。ネット上での興味関心を煮詰めて「ソーシャルメディア上の人格」を浮かび上がらせる。そして、その人が関心を強く示している分野の広告を、集中的にその人の画面に載せるという広告手法が広まっています。それは便利と喜ぶ人がいる一方、何だか知らない人に個人情報が漏れているようで気味が悪いとプライバシー侵害の不安を覚える人も出てきます。さらに近刊の「つながりすぎた世界」(ウィリアム・ダビドウ著)は世界がつながるほど、私たちの社会はもろくなると警告を発しています。ハイテクIT社会は、もう逆戻りできません。一人一人が光と影を意識しながら、賢い利用者になっていくしかないのでしょう。

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