いよいよ新年度が始まりました。テレビで企業入社式を見ると、「就職氷河期」をくぐりぬけて社会人として新たなスタートを切った若者たちの、緊張と希望に充ちた表情が印象的です。すぐに待ち受けているのは、英語などの語学研修で、いきなり数カ月の海外研修というところもあるそうです。多くの企業の最重要課題が「グローバル人材の育成と活用」だからです。社内の公用語を英語にした楽天、ユニクロが昨年話題になりましたし、日産、ソニーなどのように外国人トップがいる世界的な日本企業も珍しくなくなりつつあります。日本企業は世界的な市場を視野に入れなければ生き残れない。グローバル企業への生まれ変わりが不可欠という時代なのです。
「多くの企業がグローバル人材の育成をしているが、それにかかわる人材が不足し、育成目標には中長期的な視点が欠けており、本社人事部のグローバル化そのものが遅れています」というのは、産業能率大学総合研究所の杉原徹哉マネジメントリサーチセンター長です。142社への実態調査を基にした現状は、グローバル人材育成の哲学が確立していない印象を受けます。日本人社員の海外派遣、現地の外国人スタッフの活用だけでなく、現地トップを外国人にする、さらに日本本社の幹部・役員など経営本体の中枢に採用すべきだ、という声も年々強まっています。単に外国人を雇うという段階ではなく、経営本体、企業マネジメントのグローバル化こそ、切実に求められているのです。
ところで、グローバル化が迫られているのは企業だけでしょうか。私たちの社会そのものもグローバル化に適応する用意がなくてはならない時代に入っているのではないか。最近そう感じることが増えてきました。黒船がやって来て長い鎖国が解かれてから約160年。文明開化の明治維新以降も、学校制度や福祉制度など社会の骨格は、日本人の、日本人による、日本人のためのものでした。ところが21世紀の今、超高齢社会、少子化による人口大幅減少という日本史上初の事態を目の前にして、建設・土木、研究・教育、看病・介護などさまざまな分野で、外国人と協働しながら日常生活を支えていくしかないのではないか。こうした予想が強まっています。国際結婚の件数も増えており、日本国籍の取得の有無に限らず、外国出身の日本人が増加する趨勢は止まらないでしょう。とくにアジアの人たちをどう織り込んで、日本社会を変えていくのか。好き嫌いを超えて「1国多民族社会」という方向でこの国を設計変更しなくてはならないのではないか。21世紀の大きな課題ですし、私たち一人一人にとって知恵のいる選択でもあります。もちろん、もう一度鎖国するという究極の選択もなくはないでしょうが。
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