エンディングプラン

家族や友人など愛する人、親しい人を失った経験おありですか。だれにもあるはずです。若い世代も今後必ず経験するでしょう。一瞬にして約2万人もの人が死者・行方不明者となった昨年の東日本大震災。その悲劇を目の当たりにした私たちは、いや応なく死というものに直面させられ、自分の死への心構えを改めて強く意識したことでしょう。人生の終わり、エンドをどうまとめるかを生きているうちに自分で仕切ろうという動きが、以前にもまして盛んになってきたようです。幸福な結婚式を演出するウエディングプランに対して、エンディングプランという言葉が使われます。婚活に対して終活と今風に表現する人もいます。

昨年秋に公開された映画「エンディングノート」は、まさに一人の熟年男性が自分の最期をどう段取るかを描いた作品です。驚いたのは、創作ドラマではなく、ノンフィクションだったこと。つまり砂田麻美監督が、がんを宣告され死期を悟った自分の父親の人生最後の日々を、娘の視点から淡々と撮影したドキュメンタリーだったことが、さらに注目を浴びました。でも、けっして暗く悲しい内容ばかりでなく、明るく積極的なサラリーマンだった父親が、残された時間の中で何と何をすべきか、次々と書き出す。その「エンディングノート」に従って、自分の葬式の会場を下見したり、妻と記念旅行したり、子どもたちに残す言葉を考えたりと最期まで精力的に前向きに生きる姿が前面に出ています。終活によって家族の絆が強まっていく様子が描かれる、感動のエンターテインメントだという人さえいます。自分の人生をこれほど見事に仕切って旅立つ姿は、一種爽快でカッコよく見えてきます。

刑事ドラマは別にして、死という言葉や場面をできるだけお茶の間から排除してきたテレビ番組にも新たな波がやってきました。今放送中(1~3月)の連続ドラマ「最高の人生の終り方~エンディングプランナー~」(TBS系)です。ずばり葬儀屋が舞台です。毎回ケースが変わり、死んだ人をめぐり、その人がどんな人生を送ってきたかを調べ上げて、家族や知人に知らせる。その人の本当の姿を生前より深く知ることで、残された人たちが逆に生きる勇気をもらうという筋立てになっています。実家の葬儀屋を継いだ若者役に、山下智久や前田敦子(AKB48)といった人気者を配して、暗く重たくなりがちなドラマを前向きで明るいドラマにしています。異色なドラマを企画したプロデューサーは「テレビドラマは時代の缶詰です。大震災を経験した今こそ、死と向かい合いつつ、一人では生きていけない、人とどうつながって生きていくのか、このドラマを通して考えるきっかけになってもらえれば」と話しています。「メメントモリ」(死を忘れるな)というラテン語を刻んだ、いにしえの先人たちの呼び声を感じながら、今日一日を精いっぱい生きていきましょう。

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