オリンピックイヤー

新年2012年、平成24年は4年に一度のオリンピックイヤーです。7月27日から8月12日まで英国の首都・ロンドンで開催されます。「わあ、楽しみ!」と早くも興奮、感動の予感を抱く人も少なくないでしょうが、オリンピックそのものも大きな曲がり角に立たされていることを知っておいた方がいいでしょう。まず、五輪が大会ごとに肥大化、商業化してきている事実があります。1996年の米アトランタ大会から競技種目がどんどん増えて、テレビ放送権料がうなぎ登りを始めます。多くの競技施設を作り、参加選手・役員を受け入れるための膨大な予算を用意できるのは、経済に余裕のある大国しかありません。中小規模国家の開催機会が失われます。また競技が行われている現地よりも、世界の約200もの国・地域に配信するテレビ放送の都合、とくに欧米の放送時間が優先されるため、早朝とか深夜に競技開始という弊害が表れてきました。ひとことで言えば、だんだん見せ物化してきているのです。今年のロンドン大会で少しは歯止めがかかりはしましたが。

次に、国家の威信を懸けた戦いか、純粋に選手個人の能力を競い合う戦いか。この両極端の間で参加各国は揺れているのが現状です。「参加することに意義がある」と近代五輪を提唱したクーベルタン男爵の言は、国家予算を何百億円も使う現代ではきれいごとになってしまいました。2004年のアテネ大会で史上タイの16個の金メダルを獲得した日本選手団も、08年北京大会では9個と減らし、「どうした日本」「強化方針が間違っているのでは」などと批判や不満が噴出したほどです。新しい傾向も出てきました。サッカー、柔道、レスリング、マラソン……といった種目を見て、何か感じますか。そう、日本では女子選手の活躍が期待され、男子よりもメダル獲得の可能性が高いと目される種目です。なでしこジャパンのW杯初優勝の感激も後押ししたのでしょう、日本政府は初めて、女子の期待種目への重点強化予算を組む方針を固めました。

三つ目は、五輪を開く意味です。開催地がどう変わるか、都市再開発の意味合いが年々強くなってきました。3度目の五輪開催となるロンドンでは、五輪公園となるロンドン東部のイーストエンドが、かつてのスラム街から一新、今ではヨーロッパ最大のショッピングモールができ、多くの買い物客でにぎわいを見せています。20年五輪招致を呼びかけている東京都。是か非かを考えるとき、五輪開催をきっかけに都市がどう素晴らしく変身するかが大きな判断材料になってきました。1964年の東京五輪開催で街がどう変わったかも見据えながら、未来を創造するためにどんな投資が必要か、限られた資源と資産を何に使うべきか、私たち一人一人が真剣に考える時期に来ていると思います。

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