70億人の地球

公衆電話ボックスの中に果たして何人が入れるか。その数を競いギネスブック登録を目指す遊びを、アメリカの大学生らが行う映像を見た人もいるでしょう。十何人もの若者がぎゅうぎゅう詰めになっている、その真剣な様子に思わず失笑を漏らすほどです。だけど、その電話ボックスを地球に置き換えてみたら、笑顔が凍るかもしれません。地球上の人口がどんどん増えています。この10月31日に世界各国で誕生した赤ちゃん全員を、国連は「世界人口70億人目」と認定しました。戦後の1950年代、団塊の世代が小学校で学んだ時は確か、30億人でした。今はその2倍以上の人間で地球はあふれているという現実を直視しろ、というメッセージでもあります。

未来はどうか。もっともっと増えると国連は推定しています。2025年に80億人、2043年に90億人、2083年あたりには100億人を超えるとの推計が、国連人口基金作成の「世界人口白書2011」に記載されています。19世紀はじめに10億人を突破したあと、ほぼ一直線のカーブで増加してきた世界人口、果たして地球上に定員があるのでしょうか。上限はどこなのでしょうか。答はまだ見つかりません。ただ困った問題、解決すべき課題はわかっています。人口増加が地球上どこでも一様に起こるというわけではなく、地域や国家によって大きな隔たりが生じるという懸念です。つまり、現在の先進国はおおむね出生率の低下から人口減少が見込まれ、逆に途上国では爆発ともいうべき人口増加が確実視されています。例えば、現在人口8200万人のドイツと8300万人のナイジェリアとほぼ同数の両国が、2050年前後になると、ドイツ7500万人に対して、ナイジェリアはその2倍の1億4500万人に増えると見込まれています。人口増加地域の大半はアフリカと南アジア地域です。

貧困と格差の増大が懸念されています。食料、水、生活環境、健康・医療、男と女、若者と高齢者、都市と農村……。国連人口基金では「70億人の世界×70億人のアクション」を呼びかけ、地球に住む私たち一人一人が何か一つできることを実行するようキャンペーンをしています。多くの課題の大元に、赤ちゃんを産む女性への尊敬を高める必要があります。教育を与え、社会での地位を向上させ、出産や医療環境を改善させ、経済生活を豊かにし、親と子の家庭生活が明るくなる、それが課題解決への第一歩です。「女性の識字率が高くなると出産率が低下することは歴史が証明している」「貧困と不平等の撲滅が人口増加を緩和する」と説く研究者もいます。私たちの日本は少子化がますます進み、人口が今の半分になる日もあと数十年後かと推測されていますが、「宇宙船地球号」の乗組員の一人として、この地球に何ができるか、秋の夜長、じっと考えてみてはいかがでしょう。「私は一つこれをやる!」と考えが浮かんだら、国連人口基金東京事務所「70億人の世界キャンペーンサイト」(www.70okunin.com)に投稿してみてください。

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