テレビ界の黒船

この夏、まるで蝉しぐれのように地デジ、地デジと騒がしかったですね。1953年に日本のテレビ放送が始まって以来、ずっと地上アナログ放送だったものを停止して、画面も音質もよくなる地上デジタル放送に変えるという官民挙げての一大告知キャンペーンでした。岩手・宮城・福島の震災被災地3県を除き、7月24日から予定通り放送はスタートしました。テレビ革命はこれで一段落したと思っていたら、10月1日、またまた日本のテレビ事情を大きく変える日を迎えます。「黒船」がやって来るのです。

今度は地上波ではなく衛星波です。衛星(BS)放送に10月1日から新たに11チャンネル、来年3月に7チャンネルが参入。現在の19チャンネルから37チャンネルに増えるのです。新規18チャンネルの多くは有料放送ですが、だからといって地上波や無料の既存BS局も安閑とはしていられません。というのも、今まで通信(CS)有料放送として幅広い視聴者を獲得していた「スカパー!」「WOWOW」「Jスポーツ」などがBS有力局になるからです。百貨店の地上波に飽きた視聴者が専門店のBS局に流れる可能性は少なくありません。受信機が全世帯の7割にまで普及したBS放送は、今や十分に採算の取れる市場に成熟してきました。

さらにテレビ界に大きなインパクトを与えているのが、外国放送のBS本格参入です。幅広い年齢層に愛されるディズニー作品を軸にした「ウォルト・ディズニー」チャンネル、オーディション番組「Xファクター(アメリカン・アイドル)」やドラマ「SEX AND THE CITY」など世界的な人気番組を持つ「FOX bs238」チャンネルという強敵が、狭い門を押し広げて入ってきます。とくにFOXは流行に敏感な20~34歳の女性を中核ターゲットに、オシャレなチャンネル作りを図る。小泉喜嗣社長は「日本のテレビ局のドラマ、バラエティーはウルトラドメスティック(あまりにも国内向け)で、視聴者の期待に応えていない。世界中のエンターテインメントが1日中BSで見られるこのチャンネルは、きっと若い人の支持を得ると思う」と挑戦状を投げる。若い世代を中心にパソコン、ケータイ、ゲームなどに時間とカネを使い、テレビそのものの存在感が減っている時代。果たして、テレビが娯楽の王様としてよみがえるかどうか。テレビ界秋の陣という戦国ドラマも見ものです。

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