文明選択の一票

福島第1原子力発電所の事故と遅々とした復旧活動、放射線被害の情報開示の拙劣さから、日本の技術力と政治判断への不信感が急激に世界に広まっています。今回の事故が日本だけにとどまらず、電気エネルギー源として、原発を認めるか、止めるかという地球規模の問い掛けになっている事態なのです。

菅首相は従来からの原発推進路線を見直し、5月下旬の仏サミットで「自然エネルギーを日本社会の基幹エネルギーにまで高め、2020年代のできるだけ早い時期に自然エネルギー比率を全体の20%とする」と明言しました。さらに太陽光パネルを1000万戸の屋根に付けるとも。現状は54万戸なのだが。一方スイスやドイツは原発廃止にかじを切り替え、ドイツに至っては「22年までに現在ある17基の原発すべてを撤廃する」と政策決定しました。原発大国のフランスやロシアは継続・推進の立場を表明しており、世界各国が今どこも原発GOかSTOPかと大いなる選択に頭を痛めているところです。

では肝心の自然エネルギーとは一体どんなものなのでしょう。現在実用化されている発電は、風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスなどです。09年度の推計では、日本の発電電力量は原子力29%、液化天然ガス火力29%、石炭火力25%、大規模水力7.3%、石油火力7%で、自然エネルギーはわずかに2.7%に過ぎません。仮に現在国内にある54基の原発を全廃したとしたら、当面は液化天然ガスなど化石燃料に依存せざるを得ないのではないかという見方が強いようです。一方で50年までに脱原発が完了し、電力の100%を自然エネルギーで賄えるという試算が環境エネルギー政策研究所から出されています。電力消費量を今の半分に減らすことという条件付きですが。ただ実現に至る道には多くの難題が指摘されているのも事実です。大半が山間部という日本列島の地形を考えると、平野の多いヨーロッパのようには容易に設置できないという反論が強い。菅首相も残りの80%をどのエネルギーに頼るのか何も発言していません。原発というエネルギーを全く使わないか、コントロール技術を高度化させてうまく使い続けるか、徐々に減少させて少量にとどめるか、なるべく早く全廃に持っていくか。次の総選挙では各政党が将来の電力問題を最大の争点にせざるを得ないでしょう。今から私たち一人一人が勉強して、未来につながる一票を投じなければなりません。大げさではなく、文明選択の一票です。

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