3・11東日本大震災の傷跡は、まだまだ修復に時間がかかりそうですが、一日も早い復旧・復興をお祈りしております。ただ、巨大地震、大津波、原発事故、風評被害などを含めた今回の複合大震災を、従来の大災害と同じように見ていいのか、という声が強まっています。地球規模で見ると、世界史に刻印されるべき事態だということに気づきます。
その一つの理由は、地震、津波の恐怖映像がリアルタイムでテレビ中継され、それを多くの外国に住む人たちも目撃したという現代メディア事情です。「まるでパニック映画のようだった」と脅える人の姿が各国のニュースで流されていました。10年前の9・11米同時多発テロのときもそうでしたが、ただそれと異なるのは、現代ではさらにインターネット社会が進化し、フェイスブックやツイッターなどのネットによる情報交換が地球規模で交わされている実態です。目を覆うような惨状に驚いたあと、被災住民の冷静で秩序を失わない行動に「日本人は素晴らしい」と礼賛の嵐が続き、支援の呼びかけが世界のあちこちで各層から起こってきたのも、こうした一般市民レベルのネットワークが地球上を覆っているからこそ。政府レベルでなく、一般の人々同士が大半の国境の壁を越えて意思疎通できるのは、通信革命が進化した21世紀の今だからです。文字通り、地球は狭くなったのです。
もう一つは、地理的、通信的な近さだけでなく、人と人の心の距離も近くなったのではないか、という点です。「正義」論や「白熱教室」がベストセラーになり、昨年来日した米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が震災後の4月16日にNHKで日米中の3元同時中継で各国の若者たちと議論していました。その中で、今回の大震災を我が事のように悲しみ悼む発言が相次いだのは日本人には意外でした。政治や経済、宗教や人種・民族問題で今も紛争・戦争が地球のどこかで起こっているのが現状ですが、政府や組織を通してでなく、一般の人々の悲しくも強い姿を直接目にして心が揺さぶられた人が増えたことは確かなようです。地球が一つの心になって鼓動する瞬間があったと思います。サンデル教授は、これを機に喜怒哀楽を共有する世界になるか、世界互助の第一歩になるかと期待を持たせて番組を終わりました。「あの日本の大震災が各国の利害を超えて平和な世界を築くきっかけになった」と歴史書に書かれる日が来ることを期待します。そういう世界に近づける努力が、震災復興支援の中核エネルギーだと信じたいですね。
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