3・11 以前と以後

何とも痛ましい、胸ふさぐ大惨事。3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震。マグニチュード9・0と言うわが国史上最大の巨大地震が、東北から関東一帯の広い地域を震度7~5強の強さで揺さぶった。さらに、青森県から千葉県まで6県に及ぶ長い太平洋に面した海岸線を大津波が襲った。黒い波のかたまりが車を、家を、街を、田畑を、そして人を次々とのみ込んでいく様子をテレビの生中継で見る衝撃に、声も出なかった。3月末時点で亡くなられた方が1万人を超え、行方不明者が1万7千人にも上るという、1995年の阪神・淡路大震災を上回る未曾有の自然災害。今は被災者の皆様にお悔やみを申し上げるだけで精いっぱいです。

「さあ、復興に向けてがんばろう」と発生から3週間もたてば明るい声が列島にこだまするはずなのだが、そうなっていない理由は日本で初めての東京電力福島第一原子力発電所の深刻な事故があるから。放射性物質による人体汚染の恐怖と不安が命に直接響く。それに起因した関東地方の長期間に及ぶ計画停電が、一般家庭や職場の空気を重苦しいものにしている。「いったい、いつ収束するのか」「いや、そもそも元に戻るのか」「原発に頼る文明を見直すべきではないか」「電気を使い放題にしていた今までの生活にかえってはいけないのではないか」・・・3・11以前と以後で私たちの暮らしの根本が大きく変わると明確に意識する人、あるいは漠然と感じている人が多いのが現状でしょう。

失ったものは計り知れませんが、幸いにも得たものも小さくありません。全国から寄せられた励ましの声、支援の寄付金、世界135カ国以上から届けられた緊急援助の申し出、連帯の表明です。胸が締め付けられるような津波の脅威の映像は、国家・民族・政治体制を超えて、地球に住む人間の優しさを強く湧き出させました。被災者たちがパニックにならず整然と列を作って支援物資を受け取る姿に、欧米のみならず隣の中国やアジア各国の人々が「日本人はこんなときにも品位や礼節を失わない素晴らしい民族だ」と感嘆の声を挙げている、そんなニュースを面はゆく感じる一方で、日本人のよさ、温かさが認められて誇らしく思います。「以前こちらが大災害で困っていたときに真っ先に援助に来てくれたのがニッポン。今度はこちらが助けに来た」という数カ国の援助隊の言葉に、「ナサケは人のためならず」ということわざを思い出しました。「何か自分でもできることがしたい」という思いが今列島全体で渦巻いています。このエネルギーがある以上、日本がこの大災害を乗り越える日がきっと来るものと確信しております。一緒にがんばりましょう。

0コメント

  • 1000 / 1000