1970年に開催された日本初の万国博覧会大阪万博のシンボル、太陽の塔を制作した偉大な芸術家ですが、多くの人の頭の中には「芸術は爆発だ!」と目をむいて両手を広げる面白くて変な人との記憶が残っているかもしれません。その人、岡本太郎(1911~96年)の生誕100年を迎えた今年、1年間にわたってさまざまな催しが目白押しです。没後15年たっても人気はうせない、いや生前を知らない今の若者たちには、生きるエネルギーを与えてくれる太陽のような存在になっているようです。
100歳の誕生日にあたる2月26日、東京・港区の六本木ヒルズ・アリーナでバースデイイベント「TARO100祭」ライブが行われ、老若男女5000人を超す観客が祝い懐かしみました。この日、岡本太郎の一生を初めてドラマにした「TAROの塔」(NHK、3月19日まで毎土曜全4回)が始まり、東京国立近代美術館では「生誕100年岡本太郎展」(3月8日~5月8日)、また大阪府吹田市・万博記念公園では「太陽の塔黄金の顔展」(3月5日~4月10日)も開催されます。岡本太郎の膨大な作品や文章を盛り込んだ本や雑誌など出版企画が10種類を超える勢いです。さらに芝居「太陽の塔~1970年岡本太郎とその時代」(6月、東京・新宿紀伊国屋ホール)や、結成時に岡本太郎から揮毫をしてもらいその旗を掲げて30周年を迎えた太鼓集団「鼓童」の「ワン・アース・ツアー」も全国を回る予定です。
今なぜTARO人気なのでしょうか。芸術面だけでなく日常生活面でも常識はずれなことが多く、時には笑いの種にされもしたが、とことん世俗や常識を嫌い、どこまでも自分独自の考えを貫こうとした真摯な姿が、今の時代、新鮮に、透明に映るからかもしれません。とくに周囲に気を使いすぎて疲れてしまい、空気が読めないなどと仲間外れに遭う若い世代にとっては、世間という大多数を敵に回しながら一歩も引かずに生き通した孤高の姿が、きっとまぶしく見えるのでしょう。ただ、岡本太郎記念館の平野暁臣館長はこう言います「岡本太郎を教祖のように神格化してはいけない。太郎の遺伝子を一人一人が受け取めて、自分の中で血肉化してほしい。太郎を知る段階からステップアップして、ぜひ自分の人生の中で生かしてもらいたい」。太陽の塔、それに渋谷駅構内に設置されている大壁画「明日の神話」など数多くの作品を残しましたが、結局、最大の作品は岡本太郎という存在そのものだった、と言えるかもしれません。
あなたもぜひ今年、どこかでTAROと出会ってみては?
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