Z世代を知っていますか。最近やたらとメディアで目にし耳にする言葉です。この秋に英国グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議)に、この世代の若者たちが世界中から集まって抗議の声を上げた、というニュースが大きく取り上げられていました。急速な地球温暖化にストップをかけるために世界の主要国が決めた脱炭素の政策・戦略が緩すぎる、遅すぎる、甘すぎる!と厳しい批判を浴びせました。干ばつ、熱波、豪雨、洪水といった異常気象や平均気温が上昇している気候変動現象は、地球にとっての緊急事態だとの危機感の源には、その被害を最も強く受けるのはあなた方大人ではない、現在10~20代を生きている私たちなのだという世代の悲鳴があります。
数年前にアメリカから伝えられたこのZ世代。論者によって若干の幅はありますが、大体1990年代半ばから2010年代前半にかけて誕生した人々をひとまとめにした概念です。現在6~25歳前後の若者が含まれており、世界の人口の32%、ざっと地球上の3人に1人はこの世代に属しているという最大多数の集団です。年齢による輪切りという世代論は、とかく恣意的な要素を含み雑ぱくな議論になりがちという欠点はあるものの、年齢に近い者同士の共通点があって時代の特徴がわかりやすいという長所があります。例えば、Z世代の少年少女は物心ついた時からパソコンがありインターネット利用は当たり前の環境にあり、スマホ登場、SNS活用、AI進化のまっただ中という情報環境劇的変化の時代を生きており、まさに人類史上未曾有の文明変革の日々を体験しています。他人とのコミュニケーション手段として、Twitter、Instagram、TIkTokを使用するこの世代は、ソーシャルメディア・ネイティブ世代とも呼ばれています。一つ上のミレニアル世代(26~40歳)が成人してから使い方を学習したのと異なり、デジタル環境はすでに日常生活になっていたわけです。二つ上の親世代のX世代(41~55歳)、さらにその上、日本では団塊の世代といわれるベビーブーム世代(56~75歳)がデジタル機器に四苦八苦しているのと対照的です。
家庭内(親子)や職場内(上司と部下)でも、世代間の考えや感覚の違いが何かと問題を引き起こしています。子どものころからインターネットで世界中の情報を簡単に入手できるZ世代の特徴として、社会の現実に目を向けて、世界と共に、地球規模での問題解決をという発想が、前世代より強いことが指摘されています。とかく環境問題などはひとごとと遠ざけていた前世代と異なり、気候変動が破滅的になったら、あと10~30年先に生きる私たちこそが最悪の被害者になる、つまり自分ごとだという危機感がハンパないようです。身近な人間関係でも、男女の区別を意識するより一人の人間として自分が共感できるかどうかという価値観が強く、エモいという流行語が示すように、他人から押しつけられる物差しで判断せず、自分のハートにしみるモノやコトを優先する意識が勝っているようです。ギリシャの大昔から今の若者は・・・と古今東西の大人たちは新興世代を否定的に見てきました。今も同じでしょうが、さて人類史上最悪の環境悪化が迫っているとするならば、警告を発するZ世代の声に耳を塞いでいていいのでしょうか。Zのあとは、もう文字(文明)がないということは、崖っぷちなのでしょうか。
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