親ガチャ

今どきの若者はだらしない。古代の遺跡からこんな落書きが発見されており、古今東西、大人や親世代が若い人や子どもに感じる思いは同じだったようです。と同時に、どうしてこんな親の子に生まれてきたのか、この世の中、今の時代が悪いから私は幸せになれないという親や社会への恨み言も、多くの文明社会で見られます。日本社会にもあり、子どもは親を選べないという感情や言葉は古くから伝わっています。コロナ禍の今、そんな恨み言が新たな表現でよみがえりました。親ガチャという言葉が2021年末、ユーキャン新語・流行語大賞のトップ10に入り、大辞泉(小学館)が選ぶ新語大賞にもなり脚光をあびました。昔からある感情に、今どきの若者が新しい衣(言葉)を着せただけなのですが、なぜか大人を含めた現代社会に波紋を広げています。

若い世代がTwitterなどのSNSから広めた親ガチャ。そもそもガチャとは、100円硬貨を入れて球形のカプセル状ミニ玩具をゲットする街角にもある販売装置のガチャガチャ、あるいはガチャポンのこと。欲しいものが出てくるとは限らない、つまりクジの要素が強い、運次第であることから連想が広がり、親も選べないなあというため息につながり、親ガチャに凝縮。当初は冗談っぽく使われていたのが、テレビ・新聞などマスメディアで取り上げられると、失われた30年の間に経済格差が広がったから、コロナ禍で格差、貧困がより可視化されたからといった社会批判につながりました。そうすると当事者の若者たちも自分が不幸なのは低所得の親のせいだ、親の容姿のせいで結婚もできないなどと憤まんや怨念を口にするようになっていきました。

もちろんそんなことは自己責任だろう!という反論もありますが、日本社会の変質を指摘する見方もあります。半世紀ほど前の親は、子どもの進学、成長に金銭的な援助はあまりできなかった時代でした。だから子どもは親に楽をさせたいと努力して、自力ではい上がるという人生モデルがありました。でも少子化時代で低成長の今は、親の援助がないと塾にも行けないなど進学の機会が狭められ、さらにそれが就職の機会につながり、生涯賃金の大きな差となっていく。つまり親の経済状態が子どもの将来を左右する、という負のサイクルを生んでいるという指摘です。経済だけでなく、親の影響の強いのは肉体・生理機能、顔の美醜などDNAに関するものもあります。肉体的なガチャといえば、『五体不満足』の著者、乙武洋匡さんが私は肉体ガチャに外れたと自虐的なジョークを振った後、私は、どんなガチャを引いても豊かに生きられる社会にしたい。それには、とにかく選択肢を増やすことだと発信しています。何でも運命と受け入れて努力をしない生き方も褒められません。親のせいだとする以上に、そんな親と自分を縛っている今の社会の呪縛を解く方に力を出したらどうか。親と大人が期待しているのは、そんな若者たちの革新的な発想と実行力でしょう。自分を超えて、地球一体化の時代に生きる少年少女よ、人類のために大志を抱け!

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