実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな。社会的地位や学業・業績が高くなればなるほどおごらずに謙虚であれ、という戒めです。勝負ごとに勝っても派手なガッツポーズやVサインをひけらかさない。日本人の特質でしょうか。大相撲の土俵上の振る舞いに象徴されていますね。最近では野球の大谷翔平、フィギュアスケートの羽生結弦、体操の内村航平といったスポーツマンが放つオーラを謙遜・抑制の美学として肯定的にとらえる外国メディアが目立ちます。ところが我が国を侵略し我が民族を蹂躙したと謙虚さどころか日本民族の傲慢さを強調する近隣国があります。中国では今も学校で子ども達に日本軍の残虐行為を教え込んでいます。2010年に日本を抜いてGDP(国内総生産)世界2位に躍進し2030年前後にはアメリカを抜いてトップに躍り出ると予測される経済大国・中国は、今年7月に共産党創建100周年を控え、拡大・拡張路線をひた走っています。
ところが、一つだけ縮小・減少に向かっているものがあります。14億人余と世界一多い人口がピークを迎え、今年から本格的な少子・高齢社会に突入します。中国国家統計局によると、2021年の出生数は1062万人で前年比140万人の減少、しかも5年連続の減少です。出生率は人口1000人あたり7・52人で過去最低を更新。一方で、65歳以上の人口は右肩上がりで高齢化率は14・2%と上がり、WHO(世界保健機構)が定義する高齢社会に突入。2025年にはその数3億人に達すると見込まれ、年金などの社会保障、労働力、経済成長といったさまざまな分野を押し下げる圧力になる。つまり日本と同じ課題を突きつけられており、しかも日本を上回る急激なスピードでというわけです。
量以上に著しく変化しているのが中国社会の質、とくに若者達の変貌ぶりです。1979年から2014年まで実施された一人っ子政策によって、跡取りの男児を望む家庭が多かったせいで男性人口が女性より5%(3490万人)多く20代では10%にも拡大、男あまりが深刻です。一人っ子の男の子を溺愛するあまり、わがまま放題に育つ小皇帝が社会問題化し、激烈な進学・就職の受験競争から離脱する高学歴貧乏が顕在化し、寝そべりながら誰にも迷惑をかけず日々食えるだけでいいという生き方タンピン主義が若者の間に広がり、昨年習近平国家主席が批判したほどです。不動産価格が手の届かないほど高騰して貧富の差が拡大、共産党幹部ら一部特権階級が固定化されるという社会構造への、若者なりの静かな抵抗なのかもしれません。日本でもゆとり世代、さとり世代が主力になり、韓国では恋愛も結婚も出産も貧困のため放棄せざるを得ない3放世代が声を上げるなど、日中韓で共通するものがありそうです。政治・経済という大きなニュースで上から大づかみするだけでなく、自分と等身大の人たちがどう生きているかを生活者の視点で見ると、共感するところが発見できそうです。今年は日中国交回復50周年。当時小異を残して大同につくを合い言葉に両国が歩み寄った歴史があります。21世紀の今も、そんな民族の知恵を出し合って、お隣りとの付き合い方を模索してはいかがでしょうか。
0コメント