2、3年前から白洲次郎・正子夫妻の「白洲ブーム」が静かに広がっています。正子さんは1998年に88歳で他界するまで、能・美術・骨董に関する書物やエッセーを数多く出版、テレビでも歯に衣着せない語り口が人気でした。では、夫の次郎という人物の魅力は何だったのでしょうか。
謎多き人物、白洲次郎をNHKが初めてドラマ化しました。85年に83歳で逝去した波瀾万丈の生涯を描いた「白洲次郎」は2月、3月と2回放送、3回目は8月放送予定です。ドラマの発するメッセージは「人間は自分のプリンシプル(信条、原則)に忠実に生きよ」ということです。英国・ケンブリッジ大学に学んだ次郎は、戦前戦後、近衛文麿や吉田茂らの側近として戦争回避工作や戦後復興に尽力しました。信念、誇りを大切にする半面、主張がいれられないとわかると、権力から離れて悠々自適の暮らしに戻るというサムライ精神が見受けられます。そこがさわやかに映るのでしょう。
「初めてジーンズをはいた日本人」など次郎のダンデズムへのあこがれもあるでしょうが、次郎・正子夫妻の「自分の好きなことに命を懸けて取り組む」というスタイルが、これまでの生き方への反省を促しているのかもしれません。米アカデミー賞外国語映画賞に輝いた映画「おくりびと」が、他者・死者と自分との人生をじっくりかみしめる世界を描いて多くの人の心に温かくしみこんだのと、白洲ブームとはどこかでつながっているようです。未曾有の経済不況下、生き方チェンジのマグマが日本列島に静かに膨張している兆候でしょうか。
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