昨年のクリスマスの日に、群馬県前橋市の児童養護施設正面玄関にランドセル10個が誰かの手でそっと置かれていた。「伊達直人」名の匿名寄付で、子どもたちへのプレゼントだった。年を越して、この名前の匿名寄付の波が全国各地に波及して、強い寒波のニュースにはさまって心温まる話として新聞・テレビでも異常な盛り上がりを見せた。今までどこの市町村にでもあったような善意の寄付の話題が、なぜこんなに熱い波紋を呼んだのか。
一つはその名「伊達直人」にある。マンガ好きの人なら、この名前にピンときただろう。1968年から71年までマンガ雑誌に連載された故・梶原一騎原作「タイガーマスク」の主人公の名前だ。悪役プロレスラーとして活動し続けたが、自分が育った孤児院(今の児童養護施設)が経営難に陥ったと聞くと、団体の掟を破ってまで匿名で寄付をし続けた男。そんなストーリーに自分の行為を重ねて、「私も」という連鎖になったのかもしれない。
もう一つは、昨年流行語にもなった「無縁社会」がこれ以上深刻化していいのか、という反省マグマが列島に充満していたタイミングと重なったからではないか。人のぬくもりの感じられる社会、一人一人のつながりのある社会を取り戻さないと、本当に寂しい日本になってしまうという不安が刺激となって、困っている人にできる範囲で手を差し伸べて助けてやりたい、というこの国にあった伝統的な結いの精神が、凍土から芽を吹いたのではないか。「貧者の一灯」といっては失礼かもしれないが、多くの寄付は数万円ほど。特に大金持ちでなくともできる範囲の額である点も助け合いの気持ちの温かさを感じさせる。アメリカではマイクロソフト創業者のビル・ゲイツさんら個人資産何千億もの企業経営者たちが、世界の貧者救済のために多額の寄付をすると昨年発表した。それはそれでよいことだが、今回のタイガーマスク現象こそ、日本人の善意の示し方らしいとホッとさせられた。虎は死して皮を残す、いや多くの人の心に人間らしいぬくもりを戻してくれた。
ホスピタリティー精神を大事にしてきたメディカルメイツは、「ありがとう」「良かったね」のことばに支えられ、今年も頑張ります。
どうぞよろしくお願い申しあげます。
0コメント