日本を代表する航空会社、日本航空が今、大赤字を抱えて深刻な経営不振に陥っており、発足したばかりの新政権の難題になっています。昨年の原油暴騰、世界同時不況などで航空需要が急速に収縮したことが引き金になったようですが、全日空を含めて、不採算路線があまりにも多い実態が浮き彫りになりました。日航も全日空も昨年には大幅な路線廃止・減便を実施し、さらに今年もリストラ路線が相次いでいます。
その結果どうなるかと言うと、全国でいま97ある空港の多くで「飛行機が来ないよ!」という悲鳴が上がっています。このまま縮小傾向が続くと「空(そら)の港」が「空(から)の港」になりかねません。とくに多くが地元自治体の肝いりで作られた地方空港は、航空会社が仕払う着陸料などの航空使用料が主な収入ですから、飛行機が来なくなると赤字が積み上がり、廃港という可能性も現実味を帯びてきました。「一県一空港」体制は国土の狭い日本で本当に必要なのか、という議論が巻き起こりつつあります。
産業革命以来ざっと250年、地球上に住む私たちの意識の中に「速ければ速いほど人間の進歩だ」という価値観が根をおろしています。だが、その価値観を支える二つの前提に疑問が生じています。一つはエネルギーコストが安価かどうか。二つ目は環境に安全かどうか。この二つを損なうようなスピードアップはいらないという価値転換がいま起こりつつあります。
すでに音速を超える速度で米欧間を飛んでいたコンコルド機が撤退したのも記憶に新しいところ。より速くの情熱が人類の科学技術の進展をもたらしたのは歴史の事実ですが、21世紀の今の日本で、限られた予算をまず何に使うのかの議論が大切です。政権交代は私たち一人一人の既成の価値観を揺さぶるカルチャーショックなのかもしれません。
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