かつての日本人は「子孫に美田を残さず」と言い続けてきました。資産を残すと、子孫は努力をせず安直な暮らしをしてしまうとの戒めです。現代はどうかというと、日本は世界有数の生命保険大国だそうです。全世帯の10軒に9軒が何らかの生命保険に加入、1世帯4種類以上の生保に入り、死亡生命保険金額(普通死・災害死を含む)は5000万円にも上るとか。結構、美田いや資産を残そうとしていますね。
「日本人は生保に入りすぎ」とは海外からの声です。一生涯に払い込む金額はざっと2000万円。欧米の何倍もの額とのこと。市場規模は45兆円、GDPの8%。全国の主要都市の目抜き通りに生保企業のビルが林立しているのを見ても、いかにもうかったかがわかります。しかし、それもバブル経済崩壊後から下降に向かいます。資金運用成績が低調になり逆ザヤが発生、05年には不払い事件が業界全体で噴出、信用を失いました。少子化、非婚化といった社会構造の変化も加入率を押し下げています。
規制緩和を受けて、08年からはネット生保の新規参入が許され、原価開示・低負担のシンプルな生保が販売され、若い世代を中心に売り上げを伸ばしています。一方で、団塊の世代を中心に中高年たちの間では自分が稼いだ金は自分の人生のうちで使うという意識が強まっています。せめて葬式代くらいと生保に加入した人も少なくないでしょうが、その葬式も最近、簡略化、密葬化しつつあります。生保も衣服と同じと、青春時代、働き盛りの壮年、ゆっくり生きる熟年と各ライフサイクルに合わせた設計が求められています。要は今をどう自分らしく楽しく生きるか、ライフデザインに基づいた生保(死亡も医療も)を一人一人がどう選び取るかです。年金不安の中で、しっかりとした個人の選択がますます必要となる時代に入りました。
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