I LOVE ニッポン

今年の2月後半、旧正月「春節」の時期に、銀座、新宿といった都心の繁華街は中国人観光客でにぎわいました。テレビや新聞では「爆買い」という言葉が使われ、百万円の札束を手に、宝石や高級時計や化粧品を次々と買い求める姿が見られました。中国の新聞によると、人気商品はステンレスボトル、セラミック包丁、温水浄水器便座、電気炊飯器の「4種の神器」だそうです。日本を訪れた外国人観光客は、2014年1年間で1341万人と過去最高を記録、今年に入っても好調の波は続いており、この調子なら2020年に2000万人という目標もクリアできるという楽観論が出始めています。

だが、一時的に観光客がどっと来るだけでは、逆にパタッと来なくなることもある。国や都市に持続的に収益が入るためには、もっと国と都市のブランディングをしなくてはならないという厳しい見方もあります。今は円安や東京オリンピック開催の熱でアジアを中心に観光客が増えていますが、オリンピック後に落ち込んだ都市の例は過去にたくさんあります。 そういう波に左右されないためには、他にはない街や国の魅力を発信し、多くの外国人に実際に来訪してもらう結果を残さなくてはなりません。その源になるのが国・都市のブランド力です。英語のBRANDの語源はBURNED(焼印)=識別記号。自分の牧場の牛にこれはうちの牛だと正直に刻印し、その丁寧な世話と品質のよさが評判と価値を高め、高価でもぜひその牛が欲しいという需要と付加価値を生む……というのが、焼印(ブランド)力の原義です。

その先駆けが1977年の米ニューヨーク市の「アイ・ラブ・ニューヨーク」キャンペーンだそうです。赤いハートマークの入ったTシャツやポスターは、今でもよく見かけますね。治安と財政の悪化に苦しんでいたニューヨーク市が、これをきっかけに世界各地から人が集まるあこがれの街によみがえりました。ブランドは持続力を発揮するのです。では国別ではどうか。113カ国を対象に国別人気度を調べているヒューチャー・ブランド社の調査結果を見ますと、人気の低かった日本は2007年に初めてトップ10入りし、2009年に7位、2011年に6位と順位を上げて、ついに2014ランキングでアメリカ、カナダ、オーストラリアという上位常連グループを押さえて初めて1位に輝きました。やはり、2013年に決まった「2020年オリンピック東京招致」の成功がインパクトになったのでしょう。日本人気は確かに上げ潮ですが、これが持続することが肝要です。ブランド戦略が専門の小々馬(こごま)敦・産能大学特任教授は、こう注文を付けます。観光立国を目指す日本の活動はまだ、プロモーションレベル。自分たちの国・都市の自然や文化の魅力・価値を自分たちで理解・共有し、それを海外の人たちに発信することがさらに大事です。実際に日本に来てみたら予想以上によかった、もう一度来たいという人が増えてこそ初めて、持続的な収益と安定した財政につながる。そこまでするのがブランディングです。大都会だけでなく、日本各地の市町村には外国人にとって魅力的なところがたくさんあるはず。地方創生、という国策も追い風になるでしょう。新しいメガネで眺めると、自分たちの身の回りにあるものの魅力に気づく。そこにブランドを生み出す大きなヒントがあると思うと、オモテナシも堅苦しく考えずに、等身大でできる気がしてきませんか。

0コメント

  • 1000 / 1000