「午前様」という言葉も、やがて死語になるのでしょうか。サラリーマンが仕事帰りに居酒屋やバーで2軒3軒 はしご酒のあげく、ぎりぎり終電に乗り込んで帰宅するのが深夜0時を過ぎた翌日の午前1~2時。高度成長期やバブル経済期に元気だった昭和のお父さんたちの姿も、実は最終電車の多くが午前過ぎまで動いていたからこその光景でした。ところが昭和から平成、令和と時代は移り、首都圏や関西圏のJRや私鉄が来年春から終電の繰り 上げを実施すると今秋発表しました。こんなコロナ禍だから仕方ないという声が上がる一方、この動きはコロナ 発生以前からあり、深夜の乗客数がここ数年来減っているという事情があります。
首都圏のJR東日本管内では山手線や中央線、東海道線など17路線で、ほぼ午前1時以降の運行をバッサリと カットする方針です。日本一の乗降客数の新宿駅で見れば、例えば山手線の最終電車が現行午前1時なのを外回りで16分、内回りで19分それぞれ繰り上げ、郊外の駅では20~30分以上も繰り上がるケースが多いという。これに呼応して多くの私鉄も繰り上げに応じる予定です。繰り上げ理由は乗客減だけでなく、保守点検作業の効率化や労働環境の改善など働き方改革の面もあります。作業量が増える半面、作業員の確保が難しくなってきている事情も背景にあるようです。鉄道事業はなんといっても安全第一。IT技術が高度化した輸送システムとはいっても、 やはり基本は人間の目と耳と手が大切なのは変わりません。多くの人が眠る間にも、安全のために働く鉄道マンがいることに思いを致しましょう。
つい数年前まで東京の鉄道、地下鉄、バスを24時間運転させて、東京の街を不夜城にしようと息巻いていた政治家がいましたが、今や正反対の動きになっています。そういえば、コンビニやレストランにも24時間 営業の看板を下ろすところが増えています。従来から職種によっては深夜から朝方にかけての仕事もありますが、今後ずっと増え続けるのかどうかは不透明ですし、夜遊び人口もうなぎ登りになるのかどうか。今回の 終電繰り上げによって、居酒屋・スナック・バー・レストランなどはマイナスの影響が出るでしょうが、逆にネットカフェ・ビジネスホテル・タクシー業界はプラス面が出るでしょう。夜型から朝型人間が増えると、 ファストフード店・喫茶店で朝食をとる人が増えてくるでしょう。コロナ禍で出社しない勤務形態が少しずつなじんできた今年。さて、終電繰り上げという条件が加わると働き方にどんな影響が出て、社会がどう変わっていくのか。出勤するにしても、朝7時出社で正午まで勤務、あるいは正午出社で夕5時退社という多様な フレックス勤務が認められるか。コロナ禍によって移動と接触が制限された今年。身近な足である鉄道の運転時間がさらに短縮される来年、私たちの日常生活がどんな形に変わっていくのか。出歩かずに萎縮するのか、はたまた限られた時間を今以上に有効活用するのか。自分を変えるチャンス?かもしれません。
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