昆虫食の時代

ポストコロナ時代。世界はどう変化し、私たちの日常はどう変容していくのか。まだ霧の中のようですが、ただ一つ、コロナ危機前のような日々がそのまま復活することはないということは確かでしょう。これまでなかったものを取り入れていく運命が待ち構えているんですね。衣食住のうち、食の世界では「昆虫食」が増えるという予想が高まっています。え、昆虫を食べるの?!とのけぞる人が少なくないかもしれませんが、すでに身近な存在になりつつあります。例えば、無印良品の店にはコオロギせんべいが1袋190円で売られていて、エビセンに似た味わいが若い人たちに人気だそうです。



日本では長野県、群馬県、岐阜県などの山間地帯で、イナゴや蜂の子を食べる習慣があり、宮崎県や沖縄県でもカイコやセミの幼虫を食する生活が昔からありました。ただ、多くの日本人の食習慣にはなく、とかくゲテモノ食と敬遠されてきた歴史があります。最近、新型コロナのニュースとともに、アフリカから中東、インドにかけてバッタの大群が広大な農地を襲い荒らし食糧危機が心配だという報道があったとき、地球上の多くの国々にはバッタなど昆虫類を食べる民族がたくさんいるという事実を知りました。主に熱帯、亜熱帯という地域ですが、アジア29カ国・南北アメリカ23カ国・アフリカ36カ国でさまざまな昆虫類を常食にしているそうです。数え方にもよりますが、食べる昆虫の種類は世界中で1900にも及んでいるとか。人類の歴史を見ると、古代メソポタミア、ギリシャ、ローマ、中国でも昆虫食の記録がありますから、人間にとって昆虫は昔から栄養源だったのですね。

今回のコロナ危機を迎えて、一部の国が小麦や米など穀類の輸出をストップして、食糧の囲い込みを図ろうとしています。2050年には地球上の人口が今の77億人から100億人に膨張して、食糧不足になるとの見通しも出されています。食糧自給率が40%に満たない日本では外国からの食糧輸入がストップしたら、飢饉パニックが心配になります。地球温暖化によって農業生産が大幅に減る可能性も心配です。2013年にはすでに国連食糧農業機関(FAO)が食品および飼料における昆虫類の役割に注目する報告書を出して、さあ昆虫を食べましょうと呼びかけています。では、どんな昆虫類が実際に食べられているのか。バッタ、イナゴ、ハチ、コオロギ、セミに加えて、クワガタ、アリ、ハエ、蚊、タガメ、ゲンゴロウも好まれており、さらにクモ、サソリといった“嫌われもの”も売り物になっているのが現実です。良質のタンパク質が豊富で、カルシウムやビタミン、ミネラルも十分という健康食なのです。カナダでは工場で大量養殖して出荷する企業もあります。日本でもネット通販で、「食べられる昆虫食シリーズ」1袋2600円など多種多様なものが入手可能です。幕末から明治維新にかけ、牛肉・豚肉を食べ始めた日本人にとって、これが第2の食料革命になるか。朝昼晩の食卓に必ず一品は昆虫食が並ぶ、というのが「新しい日常」になるのは、さて何年後のことでしょうか。

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