ピッカピカの人作り

♪ピッカピカの一年生〜〜の歌声を聞くと、ランドセルを背負った小学一年生の姿が浮かんでくる、そんな季節が今年もやってきました。緊張感と期待感。初めて学校という門をくぐり、長い人生の第一歩を踏み出す記念すべき瞬間です。子どもたちを待ち受ける先生方の表情も引き締まります。その子の一生を左右するかもしれない影響力を持つ教師という存在。大人になってから小学校の時の先生を「恩師」と呼ぶ人は少なくありません。2021年の今、その小学校教師に異常が起きています。

一つは、なり手が減ってきている事態です。公立小学校教員採用試験の倍率が2019年度に2.7倍と、過去最低となりました。ピークだった2000年度の12.5倍からドーンと落下。受験者数も最多を記録した1979年度の7万人超から4万人超に激減しました。もちろん、日本全体の少子化や、団塊の世代教員の大量退職の影響で補充のため大量採用して倍率が下がった、という事情もありました。景気のいい時期には民間企業に人材が流れる、という経済力学も働いたことでしょう。でも、二つ目により深刻な理由があります。小学校の先生という仕事そのものに魅力を感じない若者が増えているのではないか、という心配です。本来の授業に加え、クラブ活動の世話、進路指導、いじめ対策、モンスターペアレントとの応対、教育委員会などからのアンケート攻勢……あまりにも多忙な日々が続き、まさにブラック職場ではないかと、心を病んで途中退職する若い教員が近年増えています。長時間労働はイヤ、プライベートな時間はじゃまされたくないという21世紀若者の価値観が根強くあるので、よほどの「働き方改革」がなければ、この傾向は容易には変わりそうにありません。

もう一つ問題がありました。小学校の現場は今、いろいろな先生方で成り立っています。自治体の採用試験に合格した正規教諭だけでなく、有期契約の臨時教員(講師)、特定の授業だけ受け持つ非常勤講師、定年後も教壇に立つ再任用教員、産休・育休の代替教員といった非正規雇用の先生方の総力が現場に詰まっています。全国ならして7.5%にもなる存在は人材の調整弁として身分不安定のまま、低い待遇基準で働いているのが実情です。2021年度から5年かけて小学校全学年は35人学級になります。よりきめの細かい教育、指導を目指す中で、目を輝かせながら子どもたちと交わるピッカピカの先生が一人でも多く育ってくれたらと思います。そのためにも、学校以外のさまざまな個性ある人材をもっと緩やかに受け入れて、教室空間、学校職場をより多様性のある、風通しのよい文化に変えていったら、という取り組みが始まりかけています。モノを作る仕事とは違う、ヒトを作る仕事の大切さ難しさへの理解を深めて、応援の声をあげていきましょう。

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