今年は「国民読書年」。これを知っている人は、きっと本好きな人でしょう。若者を中心に本・活字離れが起きており、これではならじと08年に衆参両院の全会一致で2010年を初めての「国民読書年」に制定、政官民あげてもっと本を読もうという運動を繰り広げているところです。そんなに危機なのと思う人がいるかもしれません。本は今でも1日平均500冊以上も出版されており、巨大書店に行くと、膨大な量の本の森に、まるで迷路に迷い込んだような錯覚に陥るくらいですから。でも96年をピークに全体の販売額は減少曲線を描き続けています。
量以上に質の点が問題視されています。若い世代の読書量が減り、OECD(経済協力開発機構)の国際学習到達度調査で、日本の高校生の読み書き能力の著しい低下が数字で裏づけされたほか、日常生活でもコミュニケーション能力の欠けた10~20代が増えたという声が大人たちからあがっているのも現実です。世界的には読書は社会の安定と発展の基礎という認識があり、小さいときからの読書習慣を植え付けるのが大切という共通理解があります。日本でも始業前にクラス全員がそろって10~15分好きな本を読む「朝の読書運動」が起こり、20年以上を経た今では全国の小・中・高校に広がりました。読解能力の向上だけでなく、物事を自分の頭で考える落ち着いた人格の育成にもつながる効果も報告されているほどです。
青少年時代に読んだ本に感動して、そこから将来の夢をはぐくみ自分の人生の指針を見つけた人も少なくないでしょう。感動を文章にという青少年読書感想文全国コンクールも、始まった55年には応募点数5万編余だったのが55回を数えた昨年には、全国の小・中・高生・勤労青少年から442万編を超える感動の文章が集まったといいます。それでも学校現場で聞くと、図書館の司書や読書指導教師が少なく、一人一人の生徒の好みや性格に合わせて、「君だったらこの本を読んだらどう」と勧めるオーダーメイド指導がまだまだ不十分という現実があるそうです。少子化不可避の日本、国力の基礎となる本好きの少年少女をいかに増やすかは長い目で見ると、子供手当て以上に重い問題かもしれません。
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