私たちの日常生活を振り返ってみましょう。街に出ると、近くのコンビニでおにぎり、お茶・ジュース類のペットボトルを買って、コーヒーショップでコーヒーを飲み、夕方にはスーパーで食品をレジ袋に入れて帰宅します。罪の意識を抱いている人は多くないでしょう。おにぎりの包装、弁当の容器、コーヒーカップやストロー、レジ袋……はすべてプラスチック性。壊れにくく丈夫で便利です。でも今や、この当たり前の生活の中に「罪」が潜んでいることに気付くべき時が来ました。日本で初の開催となったG20大阪サミットでも、世界的に解決すべき課題として、各国の首脳が討議したプラスチックごみ問題です。石油から製造されるプラスチック製品は、土に還らないという性質が、地球環境汚染の元凶として、今や糾弾対象になりました。
先進諸国に続いて、発展途上国でも経済状況がよくなるにつれて大量生産・大量消費時代となった21世紀。街中にレジ袋が散乱する白色汚染がアジア、アフリカの多くの国で見られ、大量のプラスチックごみが処理されないまま放置されています。さらに、プラごみは陸から海に。環境団体の告発映像を見た方も少なくないでしょう、死んだウミガメやクジラの体内からおびただしい量のレジ袋やストローなどのプラごみが発見されました。それ以上に怖いのが、海洋に流れたプラ製品が紫外線や波によって微細に砕かれて有害物質を含み、魚介類がそれを取り込むと食物連鎖によって海の生態系が狂う怖れがある、と研究者たちが訴えています。一片が5ミリ以下のマイクロプラスチックと呼ばれるプラごみは、土だけでなく水にも還らないため、始末に負えません。昨年の国際会議で今や世界の海はマイクロプラスチックのスープになっているとの報告があったほどです
一人当たりの廃プラの海洋への排出量は、米ジョージア大などの推定によると、日本は世界30位ですが、使い捨てプラごみ発生量は国連環境計画の資料では、アメリカに続いて2位という廃プラ大国の日本。すでにレジ袋を禁止しているイタリア・フランスや課税・有料化しているヨーロッパ諸国、同じくレジ袋の生産・使用に厳しい制限を課している中国・インドなどアジア諸国に比べると、日本はここまで経済団体や経済産業省の腰が重かったようです。でも今年、G20 大阪サミットでの主要議題に上げて、この問題で世界のリーダーシップをとろうという政権の決断で、産業界も一気に脱プラの趨勢が強まってきました。「一つ3円」などレジ袋の有料化によって消費者にも脱プラ意識を植え付ける、間伐材を使った紙製ストローに切り替える、リサイクル樹脂100%のペットボトルを採用する、おにぎりの包装に植物由来のプラを順次導入する、分別回収して再利用したペットボトルを100%に近づける、土に還る、海水中でも分解する生分解性ポリマーを開発・普及させるーーーーと歯車は回り始めました。環境問題の取り組みには以前からこんな標語があります。Think globally, Act locally.地球規模で考えて、身近なところから実行しよう!私たちに何ができるか、一人一人の出番です。とりあえず、おにぎりは竹の皮で包んで、お弁当は経木に入れて、お茶は急須から湯呑みに注いで、買い物にはマイバッグを持って……。地球上に生きる74億人がそれぞれの日常生活をほんの少し変えるだけで、大きく変わることがあるかもしれません。そんな奇跡を期待するのは「真夏の夜の夢」でしょうか。
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